お酒を飲む頻度や量が多い人ほど、白内障で手術を受けるリスクが上昇することが、日本人を対象とした研究(*1)で明らかになりました。

お酒は白内障の危険因子である可能性が明らかに。(写真=PIXTA)
お酒は白内障の危険因子である可能性が明らかに。(写真=PIXTA)

約3万人のデータから白内障手術と飲酒の関係を分析

 白内障の患者は年齢が進むにつれて増えますが、濁った水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入する手術を受ければ、視力の回復が期待できます。しかし、全身的な健康状態や医療費の問題などにより、手術を受けられない人もいます。白内障の原因として最も大きいのは老化で、これに抗うことはできませんが、それ以外の修正可能な危険因子が明らかになれば、白内障の発症や進行を予防できるかもしれません。これまでにも、飲酒と白内障の関係について検討した研究は複数ありましたが、一貫した結果は得られていませんでした。

 そこで東海大学医学部の深井航太氏らは、日本人の中高年男女を対象とする分析を行うことにしました。対象としたのは、労働者健康安全機構(JOHAS)が、労災病院グループにおいて1984年から行っている大規模調査で収集された入院患者のデータです。

 全国34カ所の病院に、2005年4月1日から2020年3月31日までに入院した40~69歳の日本人の中から、入院して白内障手術を受けた患者を選出しました。次に、対照群として、それらの患者と性別、年齢、入院日、入院した病院などが合致する、白内障以外の入院患者(感染症、耳の病気、皮膚と皮下の病気、泌尿生殖器の病気、妊娠・分娩関連の入院など)を選出し、1対1のペアを作りました。

 1対1のペアが形成できた、1万4861人の白内障患者と1万4861人の対照群について、飲酒習慣(頻度/1日あたりの平均飲酒量/それまでの人生における累積飲酒量)に関する情報を収集しました。このほかに、喫煙習慣(なし/過去に喫煙していたが禁煙した/現在も喫煙)、生活習慣関連の併存疾患の有無(高血圧/糖尿病/脂質異常症/肥満)、職業上の放射線被曝(あり/なし)、屋外作業(あり/なし)に関する情報も得ました。屋外作業に関する情報を得たのは、紫外線を浴び続けていると白内障リスクが高まるためです。

 白内障患者の平均年齢は62.5歳、対照群は62.3歳で、両群ともに男性が49.6%を占めていました。白内障患者では、糖尿病と高血圧の患者の割合が有意に高く、屋外での作業に従事していた人の割合も高くなっていました。

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