
HPVが原因となるがんは「子宮頸がん」だけではない
ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんの原因となることが知られているが、HPVが原因となるがんはそれだけではない。女性の外陰がんや膣がん、男性の陰茎がんのほか、男女に共通する肛門がん、中咽頭がんなどがある。
中咽頭がんは、舌の付け根(舌根)や扁桃(へんとう)あたりの「中咽頭」と呼ばれる領域にできるがんだ。中咽頭がんは、原因別に見ると、主に酒・たばこの影響によるものと、主にセクシャルビヘイビア(性行動)が影響するHPV関連のものと、大きく2種類に分けられる、と猪原氏は話す。
いずれの種類も、女性より男性のほうが多いが、それぞれに異なる特徴があるという。例えば、がんの発生部位だ。
「舌根や扁桃には月のクレーターのような小さなくぼみがあります。HPV関連のがんは、この『陰窩(いんか)』と呼ばれるくぼみの奥にHPVが侵入することで発生するのに対し、飲酒・喫煙関連のがんは表層の上皮に発生するという違いがあります。そのため、HPV関連はがんの起源となった場所が分かりにくく、早期発見が難しいという特徴があります」(猪原氏)
また、発症年齢にも違いがある。飲酒・喫煙関連は50代以降が多く、一方HPV関連は40代ごろから発症する人も多い。そして、飲酒・喫煙関連では食道がんを併発するケースが多い傾向があるのに対し、HPV関連の場合はそのほかのがんを重複するケースは少ない。
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