ウォーキングや日常生活の中の歩行で慢性疾患の予防を目指す場合、1日の歩数は多いほど予防効果が得られること、高血圧と糖尿病の予防に関しては8000~9000歩が目安となることが、米国の研究(*1)で示されました。

歩数が少ない人は死亡リスクが高い、では何歩なら大丈夫?
スマートウォッチなどのウェアラブル活動量計の利用者が増えています。しかし、毎日の歩数を計測し、健康増進に役立てようと考えても、目指すべき1日の歩数については確定的な情報はありません。
これまでに行われた研究では、「1日の歩数が少ない人は、死亡リスクや心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)の発症リスクが高い」ということが一貫して示されていました。しかし、そうした研究が用いていた方法には改善の余地がありました。たとえば、研究用の活動量計を貸し出した短期間の研究だったり、研究の参加者たちのもともとの(研究参加前の)運動習慣を考慮していなかったり、評価対象が死亡、糖尿病、心血管疾患などに限定されていたり、といった限界がありました。また、長期間かけて発症、進行する慢性疾患に対する運動の効果は検討されていませんでした。
そこで米Vanderbilt大学医療センターのHiral Master氏らは、市販のスマートウォッチを数年間装着している人たちの歩数と、その間の主要な慢性疾患の発症との関係を検討することにしました。
6000人の4年間の歩行記録を基に病気との関係を分析
対象は、米国で行われた観察研究「All of Us Research Program(AoURP)」の参加者32万9070人の中から選びました。電子健康記録の研究利用を許可し、本人所有のスマートウォッチ(Fitbit)に6カ月以上にわたって記録されていたデータを提供した18歳以上の6042人(年齢の中央値は56.7歳、73%が女性、BMIの中央値は28.1)を分析対象にしました。
6042人を4年間(中央値)、約590万人-年(*2)追跡しました。参加者の1日あたりの歩数は7731.3歩(中央値)でした。さまざまな慢性疾患を対象として、1日の歩数が1000歩増加するごとの発症リスクの変化を調べたところ、糖尿病や睡眠時無呼吸症候群などのリスクが有意に低下することが明らかになりました(表1)。
*2 人-年:観察した人数とそれぞれの年数を掛け合わせたもの。10人を1年間、もう10人を2年間観察した場合は、30人-年となる。
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