休日が終わり、また一週間が始まるのか、と思うと憂鬱に……。このような心理状態を「サザエさん症候群」などと呼ぶことがある。また、週明けの月曜日は憂鬱になることが多いことから「ブルーマンデー」などと呼ばれる。これら週末の終わりから週明けにかけて憂鬱な気持ちが高まる脳のメカニズムと、気持ちの切り替え方について、公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀さんに聞いた。
(写真はイメージ=PIXTA)
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研究論文でも示された「月曜日に憂鬱になる人が多い」という事実

休日、ゆっくり過ごすことができても、日が暮れるとともに週明けからの仕事や会社のことが気にかかり、憂鬱な気分になることがあります。テレビ番組の「サザエさん」の放映時間帯あたりから気分が落ちることから「サザエさん症候群」などと呼ばれることもあるようです。この週末の後半に訪れる憂鬱感について、何か研究されていることなどはあるのでしょうか。

篠原さん:「サザエさん症候群」についての研究は見当たりませんが、いわゆる月曜日に憂鬱になる「ブルーマンデー」に関わることについては複数の研究が行われています。

 月曜日の精神状態に関係すると思われるショッキングなデータが出ています。2021年の警察庁「自殺統計」より、厚生労働省自殺対策推進室が作成した統計によると、曜日別の自殺者数は「月曜日が最も多い」ことが明らかになっています。

 また、早稲田大学と大阪大学の研究グループが2018年に発表した研究もあります(*1)。

 1974年から2014年までの41年間に自死に至った成人のうち、死亡日時が記録されている約87万人を対象に集計。集計結果をバブル崩壊の1995年を境に「前期(1974~1994年)」と「後期(1995~2014年)」に分けて分析したところ、バブル崩壊以降の景気が悪化した「後期」では、40~65歳の中高年男性の自殺は月曜日に多く、最も少ない週末の土曜日に比べると1.55倍多くなっていました(グラフ)。

40~65歳男性の自死のピークは月曜日
40~65歳男性の自死のピークは月曜日
1974年から2014年までの41年間に自死に至った20歳以上の日本人約87万人の死亡時刻、曜日を男女別、年齢別に集計。バブル後の景気が悪化した1995~2014年では、中高年男性(40~65歳)の自死は一週間の中で月曜日に多く、最も少ない土曜日に比べると1.55倍だった。また、月曜の早朝、出勤前の時間帯の自殺者が多かった。 (データ:J Affect Disord. 2019 Jan 15;243:366-374. )

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