一般的な健康診断で行われる尿検査で、たんぱく尿(+)または微量たんぱく尿(±)だった人は、尿たんぱくが陰性(-)だった人に比べ、その後にがんで死亡するリスクが高いことが、特定健診を受けた日本人を対象に行われた研究で分かりました。

微量たんぱく尿とがんの発症・死亡リスクとの関係は不明だった
慢性腎臓病が進行すると、感染症や貧血、骨の病気などの合併症のリスクが上昇することは知られています。がんのリスクも高まるとする報告もあります。しかし、腎臓病と診断されてはいないが健康診断でたんぱく尿が指摘された人、特に結果が(±)〔微量たんぱく尿〕という結果を受け取った人の、その後のがんの発症・死亡リスクについて検討した研究はほとんどありませんでした。
そこで奈良県立医科大学腎臓内科の松井勝氏らは、日本の7都道府県の住民の中から、2008~2011年に特定健診を受けた成人を対象として、たんぱく尿、特に微量たんぱく尿とがんによる死亡の関係を検討することにしました。対象は、尿検査の結果が記録されているなどの条件を満たした37万7202人です。年齢の中央値は64歳で、44%が男性でした。
検査紙を用いた尿検査の結果が、(-)は陰性、(±)は微量たんぱく尿、(1+)は軽度たんぱく尿、(2+)以上は中等度から重度のたんぱく尿としました。37万7202人のうち、3万2051人(9%)が微量たんぱく尿、2万2765人(7%)が軽度以上のたんぱく尿(1万5297人が軽度たんぱく尿、7468人が中等度から重度のたんぱく尿)という判定を受けていました。
2014年までの中央値3.7年の追跡で、5979人が死亡しており、うち3056人ががんによる死亡でした。がん死亡率は1万人-年(*1)あたり21.7でした。
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