過去20年間で、米国の成人の間で鉄欠乏性貧血患者が増加しており、その原因が、健康志向が強まったことによる食習慣の変化や、食品自体に含まれる鉄分の減少にある可能性が、大規模観察研究によって示されました。

米国では近年、鉄欠乏性貧血患者の割合が上昇中
世界の貧血患者の30~50%は、鉄分が不足することで起こる鉄欠乏性貧血だと言われています。鉄は、酸素を全身に運ぶ赤血球の成分であるヘモグロビンを作るために欠かせません。鉄の欠乏は死亡の危険因子であり、脳卒中や心筋梗塞、認知機能障害、抑うつなどとも関係することが知られています。
鉄欠乏性貧血は、食品から十分な鉄分を摂取できていない場合や、体の中で鉄の損失が増えた場合などに発生します。米国では近年、鉄欠乏性貧血患者の割合が上昇し、この疾患に関連する死亡率も上昇していましたが、その理由は明らかではありませんでした。
そこで米Rider大学などの研究者たちは、米国民を対象とする国民健康栄養調査(NHANES)のデータベースを利用して、1999年から2018年までの鉄欠乏性貧血患者の割合の変化と、鉄欠乏性貧血関連の死亡率の変化を調べました。鉄欠乏性貧血の発症と関係する、食事を介した鉄分の摂取量の変化についても検討し、さらに、米国の食品に含まれる鉄分量に変化があったかどうかに関する検討も行いました。
鉄欠乏性貧血と見られる人の割合は男女ともに増加
まず、鉄欠乏性貧血で治療を受けていた患者の割合の変化と、ヘモグロビン値に基づいて貧血と見なされた人の割合の変化を調べたところ、女性はいずれも上昇傾向を示し、男性も貧血と見なされた人の割合に上昇傾向が見られました(表1)。
男女別、および、年齢別(18歳未満の未成年と18歳以上の成人)に調べたところ、「未成年の女性」、「成人男性」、「成人女性」において上昇傾向が見られました。貧血と見なされた人の割合の上昇幅は、成人女性の10.5%から、未成年の女性の103%の範囲でした。
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