
酒飲みなら誰もが恐れる「肝硬変」。
前回、肝硬変とその合併症について、「肝臓のスペシャリスト」として名高い、武蔵野赤十字病院院長の泉並木氏に詳しくお話を伺った。
肝硬変そのものはもちろん、食道胃静脈瘤などの恐ろしい合併症によって死に至ることもあると聞き、改めてその脅威を認識した方も多かったのではないだろうか。
肝硬変は、肝臓の組織が線維組織に置き換わることで「線維化」が進み、肝臓が硬くなってしまう病気だ。大量のお酒を日常的に飲み続けたり、肝臓の細胞に脂肪が蓄積したり(脂肪肝)、ウイルスに感染したりすることで肝臓に炎症が起こり、その炎症が続くと次第に肝臓の線維化が進み、肝機能が低下していく。
肝硬変を引き起こす原因のうち、酒飲みにとって身近なのが「脂肪肝」である。今回は主に脂肪肝について、泉氏に引き続きお話を伺っていく。
私の周囲の酒飲みも脂肪肝を抱えている人が少なくない。そして、健康診断などで脂肪肝を指摘されても、病院に行くどころか、「脂肪肝って言われちゃってさ~ でも相変わらず飲んでいるよ」と“脂肪肝自慢”をする酒飲みの多いこと! ほとんどの人が「たかが脂肪肝」と思っているようだ。
「脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまった状態を指します。一般的に肝臓の細胞の約3割以上に脂肪がたまると、脂肪肝と診断されます。その数は、ざっくりと約3000万人とも言われています。自覚症状がないこともあって脂肪肝を軽視する方が多く、医療機関を受診する人が少ないのが現状です。脂肪肝になると、肝硬変だけでなく、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などのリスクも高まるので、決して油断できません。男性に多い疾患ですが、閉経後の女性も注意が必要です」(泉氏)
「非アルコール性」の脂肪肝でもお酒には注意?
脂肪肝には、「アルコール性」と「非アルコール性」があると聞く。先生、われわれ酒飲みが関係するのは、やはりアルコール性の脂肪肝ですか?
「実は、そうとも限らないのです。もちろん、毎日記憶を失うほど大量に飲み続けている人が脂肪肝になった場合、『アルコール性』である可能性は高い。でも、そこまで大酒を飲んでいないけれども、けっこうお酒を飲んでいる人が『非アルコール性』の脂肪肝だと診断されることもあります。すると、『自分は非アルコール性だから大丈夫だ』と油断してお酒を飲み続けて、それが脂肪肝を悪化させてしまうことがあるのです」(泉氏)
確かに、もし自分が「非アルコール性」の脂肪肝だと“お墨付き”をもらったら、安心して晩酌してしまいそうだ。
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