米国で新型コロナウイルスのワクチン接種率が高かった州では、低かった州に比べてコロナによる死亡や超過死亡が少なく抑えられていたことが、米国の研究(*1)で分かりました。

米国でコロナワクチン接種率の高い州では、コロナによる死亡や超過死亡が抑えられていました。(写真=PIXTA)
米国でコロナワクチン接種率の高い州では、コロナによる死亡や超過死亡が抑えられていました。(写真=PIXTA)

OECD20カ国と、米国内の接種率上位10州と下位10州を比較

 新型コロナウイルス感染症との闘いは、ワクチンの登場により大きく変化しました。しかし、変異株の相次ぐ登場は、ワクチンの効果を脅かしつつあります。

 そこで米Brown大学公衆衛生大学院のAlyssa Bilinski氏らは、ワクチン接種が広まる一方で、デルタ株とオミクロン株の流行が拡大していた2021年6月から2022年3月までの時期について、ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症による死亡率、および、超過死亡率(*2)を比較することにしました。

 デルタ株流行期間は2021年6月27日から2021年12月25日までとし、オミクロン株流行期間は2021年12月26日から2022年3月26日までとしました。

 分析対象とした国と地域は、OECD(経済協力開発機構)加盟国のうちの20カ国(2021年の人口が500万人を超えており、人口1人あたりの国内総生産が2万5000ドル超の国)と、米国、および、米国内各州のうちワクチン接種率の上位10州と下位10州です。ワクチン接種率は、2022年1月時点で2回以上の接種を終えていた人の割合としました。

 米国における新型コロナウイルス感染症の死亡率、総死亡率、ワクチン接種率に関するデータは、米疾病管理予防センターから入手しました。他国については、新型コロナウイルス感染症死亡率のデータはWHO(世界保健機関)から、総死亡数に関するデータはOECDデータベースから、ワクチン接種率に関するデータはオンラインデータベースOur World in Dataから得ました。あらゆる死因による超過死亡数は、2015~2019年のデータをもとに予測された総死亡数と、2021年6月27日以降に実際に観測された総死亡数の差として算出しました。

上位10州のコロナ死亡率は下位10州のほぼ半分

 米国では、デルタ株とオミクロン株の流行期に計37万298人が新型コロナウイルス感染症により死亡していました。死亡率は10万人あたり111.6人で、デルタ株流行期間は10万人あたり60.9人、オミクロン株流行期間では10万人あたり50.6人でした(次ページ表1)。米国内でワクチン接種率がトップ10に入った州の コロナによる死亡率は、10万人あたり74.7人で、下位10州 (10万人あたり146人)のほぼ半分でした。

 米国のワクチン接種率の上位10州と同じ接種率が米国全土で実現していたなら、米国全体で12万2304人(デルタ株流行期に10万8916人、オミクロン株流行期には1万3388人)が新型コロナウイルス感染症による死を免れたと推定されました。

*1 Bilinski A, et al. JAMA. 2022 Nov 18. doi: 10.1001/jama.2022.21795. Online ahead of print.
*2 超過死亡:例年のデータから予測される総死亡数と、実際の総死亡数の差。戦争や飢饉、大規模な自然災害、感染症の大流行などがあると超過死亡は増加する。

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