2020年12月、音楽・芸能大手のエイベックスが南青山の本社ビルを売却し、売却(セール)した物件をそのまま賃貸で利用(リースバック)するセールアンドリースバックを実施すると発表した。世間を騒がせたこの売却劇のもう一方の主役が、物件を購入したカナダの「ベントール・グリーンオーク(BGO)」である。今後数年で日本の不動産市場に1兆円近い投資を計画する大手不動産ファンドだ。コロナ禍の影響で在宅勤務が広がっているが、同社のサニー・カルシCEOは「オフィス機能は維持されて、多くの人が職場に戻る」と分析する。

世界で約500億ドル(約5兆4000億円)の資産を運用するベントール・グリーンオーク(BGO)のCEO(最高経営責任者)。2010年に設立した米グリーンオーク・リアル・エステートの創設者。09年まではモルガンスタンレーの不動産投資(MSREI)事業のグローバル共同責任者としてモルガンスタンレー不動産ファンドの社長を務めた。モルガンスタンレー時代の18年間で、世界の6つの地域に居住した経験がある。アジア地域では10年間を過ごしており、中でも1998年から2006年まで東京で暮らした経験から日本の不動産市場に詳しい(写真:ベントール・グリーンオーク提供)
オフィスへの人の回帰を見込んで日本の不動産市場への積極的な投資を計画されています。リモートワークを導入した企業も多くなっていますが、オフィスに人は戻るのでしょうか。
サニー・カルシ氏(以下カルシ氏):私と現在の同僚の多くは、前職時代を含め1997年から日本の不動産市場に投資をしてきた歴史があり、日本の不動産については深い洞察があります。多くの外国人投資家にとって日本の不動産は魅力的な投資先となります。政情が非常に安定しており、法制度がしっかり整備されており、都市部には投資に適したストックも多い。
パンデミックを通じて改めて日本の不動産市場は面白いと感じました。確かに他国と同じように物流施設やデータセンターへの投資は増え、そこは疑うところはありません。確かに、オフィス環境の先行きについては疑問符が付けられている。しかし実のところ、オフィス需要について我々が世界でもっとも心配をしていない都市は「東京」なのです。
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