プレゼン会議に潜入「緊張で汗びっしょり」の努力

 登壇したのは、このクリーナーの企画を担当するアイリスオーヤマBtoCメーカー事業本部 クリーナー事業部副事業部長の吉川将一氏。

 まず、改めてコンセプトを説明。競合となる商品に対する機能の特徴や、原価提案など発売に向けた具体的な提案と進める。大山社長からは競合商品についての質問や、機能に関する指摘が3度ほど。最後には、大山社長から発売を承諾する決裁のハンコが押された。その間、僅か約6分だった。

 そこで行われた会話はこんな流れだ。


吉川氏「スティッククリーナーでは、2万円以上ではシェアがほぼ無いという状況になっています。そのシェアを取るべく、2~3万円台のサイクロンシステムクリーナーを提案させていただきたいと思っております。(中略)軽くても吸い込み仕事率をカバーし、他社ではフラグシップのところまでしか付いていない機能も、今回搭載することで、より強みを出していきたいと考えております」

アイリスオーヤマBtoCメーカー事業本部 クリーナー事業部副事業部長の吉川将一氏
アイリスオーヤマBtoCメーカー事業本部 クリーナー事業部副事業部長の吉川将一氏

大山社長「2~3万円台でそのスペックが付いている従来商品は無いのか」

吉川氏「無いです。他のメーカーですと、5万円以上の商品のみにしか付いていません。(中略)同価格帯の他社製品や、ネットで売れ筋の1万円台の製品と比べても、軽量でパワーヘッドが自走式で、ほこりセンサー、置くだけ充電と豊富な機能を備えており、負けないと考えております」

大山社長「DCモーターはブラシレスじゃないんだ」

吉川氏「はい。物によって違います。原価提案の方になります。(中略)世の中の主戦場は3万円以上になっておりますので、まずは2~3万円台の取れていないシェアを取って、ゆくゆくはそれ以上のところを開発していこうと考えています」

大山社長「5万円以上は、さすがにうちはね。わざわざ高くしていくというのもあれだから。(中略)今回は階段の2段目、ということで、ここはこれでよろしく。次の戦い方を考えてください」


 限られた時間だけに、議論される内容は要点のみでシンプル。だが、その裏には社長から発売の決裁を得るための膨大な努力がある。

 象徴的なのが、市場分析の説明などにプレゼンで使ったエクセルのシート。吉川氏は、「会議では3シートくらいしか見せていないが、あの後ろに10シート以上用意していた」と言う。

 例えば市場の売れ筋商品を紹介する内容について、販路別など細分化した分析も用意していた。「イレギュラーな質問が来ても対応できるように。この会議で提案して商品化まで至るのは、肌感覚では60%くらい。どんな質問でもその場で答えられないと、発売できなくなってしまうので」(吉川氏)

 吉川氏はこの会議に参加するようになって半年以上というが、この日のプレゼン直後も「緊張で汗びっしょり」とこぼしていた。

 新商品開発会議に加え、もう一つアイリスオーヤマにはユニークな会議文化がある。それが「立ちミーティング」だ。

立ったまま、突発的に会議を始められる文化がある
立ったまま、突発的に会議を始められる文化がある

 オフィスに立ったまま複数人が囲めるテーブルがいくつもあり、何か相談したい内容があったときに、突発的に会議を始める。吉川氏もプレゼンに向けて、リハーサルともいうべき説明を上司に立ちミーティングで行い、「意義はどこにあるか」「自社競合を避けられているか」といったアドバイスを受けたという。

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