最終回となる今回では、東京と地方の“心の障壁”について述べながら、地方創生が成功するためには何が必要なのか、また「沖縄・新テーマパーク」の掲げる大義についても触れたい。地方創生は“遠いどこかの他人事”ではなく、日本人が豊かになるための可能性に溢れているチャンスだという理解が広まれば幸いだ。

東京と地方の心理的障壁

 「地方」という言葉につきまとう東京の“上から目線”なニュアンスが私は大嫌いだ。この感覚を深いところで理解できるようになったのは、USJ再建の使命を終えて刀を起業して以降である。かつてUSJで関西のために奮闘していた時代にも、東から感じる“上から目線“に違和感をもっていた。しかしUSJを辞めて刀を起業し、もっと地に足を着けて地域の人々と交流させて頂くうちに、それまでの自分も無自覚に「上から目線」だったことに気づくことになる。

 第4回で経緯を述べたように、私は近年、大自然における消費者の本能と行動の因果関係を解き明かすために、猟師となって人と獣の世界を往来している。そこからの御縁で、さまざまな村落や限界集落で暮らす人々と親しく交流させて頂いた。そこで地方創生が進むための心理的な課題があることに気づいた。結論から言えば、価値観の違いを理解した上で、地方創生プロジェクトは丁寧に進めなくてはならない

 もともと都会側の人間だった私は、「地方は困っているので変革を切望しているに違いない」と思い込んでいた。しかし、さまざまな課題はあるにせよ、地方で暮らす人たちの認識は困っているどころか“とても幸せ”なのである。酒を飲みながら話を聴いていると、むしろ変わることに対して危機感があり、何よりも現状維持を望む本音が強い。経済発展は良いこと、観光振興も良いことだと賛同していても、それには「今までの暮らしが変わらない」ことが暗黙の前提になっている。「でも過疎化はやばいでしょう?」と話を向けても、「地域として人口が減るのも困るが、それよりも“よそ者”が増えて集落が変わってしまうのはもっと困る」という意見をよく聞いた。良くも悪くも「守旧的かつ排他的」と評される地方の防御反応だ。これが過度であれば衰退を招く一因になるだろう。

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