西武グループと刀社が力を合わせて約3年間じっくり準備してきた「西武園ゆうえんち」のリニューアル・プロジェクトがようやく世に出ようとしている。70年以上もの歴史を持つ「西武園ゆうえんち」だが、近年は集客が低迷していた。難易度は高いが、これこそやりがいがある地方創生プロジェクトだ。都心からの“心理的な距離感”を克服して、大関東全域から埼玉県所沢市までどうやって集客するのかという挑戦である。そして、関係者一同が一緒になって取り組んできた、新しい「西武園ゆうえんち」は、コロナ災厄の推移を見極めつつ2021年の5月19日にいよいよオープンする。しかしパークは開けてからが本当の勝負である。創業したばかりの我々のノウハウをぜひと言って下さった後藤高志・西武ホールディングス社長兼西武鉄道会長をはじめとする西武グループの信頼に、刀として何がなんでも応えさせて頂きたい。
「西武園ゆうえんち」に投入するエンターテイメントを“投資案件”に変えるノウハウ
今回、「西武園ゆうえんち」のリニューアルの総予算は100億円である。一般感覚でも大きな額に違いない。しかし装置ビジネスであるパーク業界の常識では、パーク全体におよぶリニューアル事業としては非常に抑制的な予算である。アトラクションを入れる建物1つだけでも20~30億円が平気でかかる世界であり、ハリー・ポッターの新エリアにも450億円を要した。USJやTDR(東京ディズニーリゾート)では、100億円は“ほどほどのアトラクション1つ”を増設するくらいの予算だ。
しかし「西武園ゆうえんち」の経営規模から考えると、100億円の投資は非常に大きくて重い。だから我々は100億円からどうすれば“破格の価値”を引き出せるかに心血を注いだ。その結果、昭和の街並みを舞台にする新エリアの建設や、パーク随所におよぶ改装だけでなく、目玉になる大型ダークライド(屋内型ライドアトラクション)の『ゴジラ・ザ・ライド』までも新設できた。
この『ゴジラ・ザ・ライド』にも、刀の想いとノウハウを注ぎ込んだ。消費者にとって「驚くような面白さ」を体験して頂けると確信している。主役としてゲストを巻き込むストーリー展開、巨大怪獣が自分に差し迫る大迫力をどのように実現するのか、大展開する映像とゲストを一緒に激しく動かしても“乗り物酔い”させないようにどう絶妙にシンクロさせるのかなど、他にも多く「刀メソッド」を使っている。
はっきり申し上げると、我々は大手テーマパークの一級品ライドアトラクションに比肩しうる強力な体験価値を、とんでもない低予算で実現することを目指したのだ。大手テーマパークであれば同様のゲスト体験を作るのに、何倍もの予算を使ってしまうことを私はよく知っている。そう、これは業界人にとっては驚くべき投資効率でつくられた“ダークライドの衝撃作”になるだろう。「この規模とこの面白さで、この予算!?」と、世界を驚かせるのを楽しみに作ってきた。このレベルの体験クオリティのダークライドを有する遊園地規模の施設は、現段階では「西武園ゆうえんち」くらいだろう。
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