
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は『ハリウッド映画のテーマパーク』と言っているのに、日本の漫画やゲームをコンテンツに使うのはおかしいのではないか。コンセプトがぶれているのではないか」
2010年代前半、USJ。ブランド戦略を転換し始めたUSJに当初、マスコミは批判的な見方をしていました。USJは米ハリウッド映画のテーマパークとして2001年3月末に大阪市に開業。当初のコンセプトから外れている、というのがマスコミが批判した理由でした。
この頃、パーク内の風景は徐々に変わり始めていました。日本の漫画「進撃の巨人」やゲーム「バイオハザード」「モンスターハンター」を題材にしたアトラクションが登場。スヌーピーやハローキティ、セサミストリートのキャラクターが会した子供向けエリアもオープンしました。
こうしたハリウッド映画だけにこだわらない戦略は、大人が中心になっていた顧客層を子供や家族連れにまで拡大。実際、07、08年頃に底となっていた年間750万人の来場客数は年々増えていきました。さらに14年に開業した「ハリー・ポッター」のエリアはアジアを中心とする海外からも来場客を呼び込む起爆剤となり、17年には年間来場者数が約1500万人と過去最高を更新しました。
もちろん、当初はUSJの戦略に批判的な見方をしていたマスコミの書きぶりも大きく変わりました。結果を着実に出すUSJを批判的に書くメディアは皆無となります。当初のマスコミの指摘は間違っていたと言わざるを得ません。
一時は「倒産」しかけたUSJを再建させた立役者が、現在、マーケティング支援会社、刀の社長を務める森岡毅さんです。何がUSJの来場客数のV字回復をけん引したのか。ブランド戦略の転換だけでは、あそこまできれいな右肩上がりの成長をすることはできなかったでしょう。
当時どんな思いでUSJの再建に取り組んでいたのか。そして今、金融、小売り、エンターテインメント業界など幅広い顧客企業でも実績を上げつつありますが、どんな思いで再建や事業拡大に取り組んでいるのか。15年ごろ、USJを取材していた私は、当時の話の続きを聞きたい思いもあって、今回、日本を代表するマーケターの森岡さんに寄稿をお願いしました。
多くの経営者にとって、ヒントになる話があるはずです。ぜひお見逃しのないよう、今シリーズの「WATCH」をお願いいたします。