新型コロナウイルスの感染拡大で3度目の緊急事態宣言が東京都と大阪府、京都府、兵庫県に発令された。だが、大阪では既に医療は限界を超え始めている。感染力の強い英国型変異株が広がり、若い世代に感染者が増えて重症患者も増え続けている。一部の医療現場では、人工呼吸器などの重要な医療機器を誰から優先で使うかを迫られかねない状況になっているという。患者の重症度によって治療の優先度を決定するトリアージの議論が必要な時が迫りつつある。

大阪府の新型コロナの新規感染者数は4月25日の日曜日に1050人となった(写真:共同通信、26日午前)
大阪府の新型コロナの新規感染者数は4月25日の日曜日に1050人となった(写真:共同通信、26日午前)

 「寝たきりの高齢者でした。新型コロナウイルスの感染者で。恐らく大学病院でも受けなかったのでしょう。うちに回ってきて……。実は当院も少し前に新型コロナ患者の関連で色々苦労して、いったん外来の受け入れを止めていたのです。でも、市内に病床がなくなって、『受けてくれないか』と頼まれたのです」

 西日本のある中規模病院の院長は昨年春の出来事をこう振り返る。新型コロナ患者の重症者を受け入れるのは大半が大学病院など高度医療のできる医療施設。ところが、その大学病院が新型コロナ患者の急増で病床が逼迫し、「ECMO(体外式膜型人工肺)や人工呼吸器を若い患者に回すために(高齢者は)受けなかったのではないか」という。そして、「それはやっぱりトリアージですよ」と打ち明ける。

 トリアージとは、患者の重症度によって治療の優先度を決定して「選別」をしていくことだ。結果から見れば、大学病院は、より若い世代を“優先”したかのようだ。

重症者の中で若い世代が増える大阪

 東京都、京都府とともに緊急事態宣言が発令された大阪府や兵庫県の医療はそれに近い状態にあるのではないか。大阪府内のある総合病院の医師は「若い人を優先的にということは現実に起きている」とつぶやく。

 実際、大阪府の新型コロナの新規感染者数は4月25日の日曜日に1050人となり、6日連続で1000人を超えた。719人だった同19日を除くと、同13日以降、25日まで1000人超えが続いた。

 「非常に厳しい状況が続いている。うちはコロナ患者用病床を20設けているが、医療の状況があまりにきついのでさらに3病床増やした。なんとかやっているが、これ以上は……」。大阪市内で加納総合病院などを経営する社会医療法人、協和会の加納繁照理事長は顔を曇らせながら言う。約300床の中堅病院だが、コロナ患者などを主に受け入れる急性期と呼ばれる病床は150。ここを中心にコロナ病床を捻出しながら、第4波では重症者の入院まで受けた。中等症以下を主に受け持つ民間病院としては思い切った対応である。

 大阪府の重症患者数は25日現在で362人に上る。しかし、重症患者用病床は288で284人が入院。そこに入りきれない77人の重症者が中等症の病床などで治療を受け、1人は滋賀県に搬送されている。加納総合病院が受け入れているのもその「中等症病床入院」の患者だ。

「大阪の医療状況は極めて厳しい」と、大阪市で加納総合病院などを経営する社会医療法人、協和会の加納繁照理事長は言う(写真=太田 未来子)
「大阪の医療状況は極めて厳しい」と、大阪市で加納総合病院などを経営する社会医療法人、協和会の加納繁照理事長は言う(写真=太田 未来子)

 現状は医療逼迫を超えた状況であり、容易に解決するとは思えない。「重症病床は常時、看護師が1人張り付いていなければならず、人員の面でも負担は極めて大きい」(加納・協和会理事長)上に、物理的に病床を広げるのが難しい面もある。民間病院は50床程度の病棟やフロアが多いが、その一部をコロナ患者用に充てると、一般患者と接触しないように人やモノの動線を分ける必要が出てくる。それ自体が容易ではない上に、病棟の状況によっては一般患者の病床を大きく減らさざるを得なくなることもある。

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