コロナ禍で最大の問題となったのは医療の逼迫だった。民間中心で小規模病院の多い日本の医療体制はパンデミックに強くない。感染度に応じて柔軟に体制を変える仕組みが喫緊の、そして将来にわたる課題だ。

 「うちのマンションの価値が下がったらどうしてくれるんだ!」

 福岡市中心部の繁華街から西へ車で10分ほどの幹線道路沿いにある福岡記念病院。上野高史院長は嵐のように押し寄せてきた多数のクレーム電話が忘れられないという。

 昨年4月、看護師、患者、その家族ら30人を超える新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。防護服、医療用マスクは当然使用し、感染対策は万全だった。だが、どこからか感染が始まると、急拡大していった。

 年間約5500件もの搬送を受け入れる市内有数の救急病院だったが、その受け入れも一般外来もすぐに止めた。最初の感染者が見つかった時点で入院していた患者も退院を2週間延期。病院と外部との接触を最低限に抑え、徹底した対策を講じた。

 それでも感染拡大が伝わると周りは恐れ、クレーム電話の嵐に見舞われた。「福岡市の恥だ」とさえ言われた。

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この記事はシリーズ「コロナ後の医療、危機管理なき日本の隘路」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。