新型コロナウイルスの感染は収まらず、第4波が迫っていると指摘されるようになった。日本の人口当たりの病床数は先進国のトップ水準なのに患者で逼迫(ひっぱく)し、一時は医療崩壊も懸念された。ワクチンの国内供給は進まず、開発でも出遅れている。平時は行き渡る日本の医療。危機に際し十分な対応ができないのはなぜなのか。
シリーズ
コロナ後の医療、危機管理なき日本の隘路

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日本は「途上国」、ワクチン接種開始で出遅れ鮮明
高齢者に対する新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。集団免疫獲得への第一歩だ。大きな混乱はなく、打ち終えた人からは安堵の声が上がる。だが、当初の供給量は少ない。変異株も広がり、むしろ不安は強まっている。
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「誰から接種すればいいのか」、ワクチン「少量」に自治体困惑
ワクチン確保の国際競争が激しくなるなかで、日本とケタ違いの死者が出ている国で先に接種が進み、日本が遅れる構図をやむを得ないという見方はあるだろう。しかし、「現場」に相当する自治体レベルでみると事情は異なる。
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ワクチン接種開始、「システムどうする」国と自治体がせめぎ合い
4月12日に開始した新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種。その開始に向け、厚生労働省と内閣官房はシステム構築に全力を注いできた。しかし、自治体の目線で見ると運用面ではいくつも課題があったようだ。当初、国が描いたシステム…
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日の丸ワクチン出遅れ、安全保障の視点を欠いた
ワクチン接種が遅れる主因の一つは、国内で開発したワクチンがないことだ。米欧中ロは、国が安全保障の柱と位置づけ、徹底した産業育成をしてきた。日本は国民のワクチンへの不信感もある。政府支援がなければ周回遅れが続く。
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コロナ接触確認「COCOA」失敗の意味とは、IT転換促す奇貨に
厚生労働省が鳴り物入りで送り出した新型コロナ接触確認アプリ「COCOA」。4カ月にわたり3割のスマホで機能しないなど不具合が次々に発生した。厚労省のシステム問題は日本が抱えるIT化への構造的課題を浮き彫りにしている。
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日本は患者も死者も少ない、コロナ禍で病院はなぜ逼迫するのか
コロナ禍で最大の問題となったのは医療の逼迫だった。民間中心で小規模病院の多い日本の医療体制はパンデミックに強くない。感染度に応じて柔軟に体制を変える仕組みが喫緊の、そして将来にわたる課題だ。
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医療崩壊に瀕した大阪、トリアージの議論が必要に
新型コロナウイルスの感染拡大で3度目の緊急事態宣言が東京都と大阪府、京都府、兵庫県に発令された。だが、大阪では既に医療は限界を超え始めている。感染力の強い英国型変異株が広がり、若い世代に感染者が増えて重症患者も増え続けて…
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なお残る「介護逼迫」の危機、あるクラスター施設の辛すぎる出来事
新型コロナウイルスの感染拡大で大阪などに医療逼迫の危機が広がる。医療だけではない。介護現場でも実態はもう1つの危機といっていい苦境にある。今年1月、クラスター(感染者集団)が発生した施設の出来事は、介護現場の危機を強く感…
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大阪医療逼迫の現場「早く入院できていたらと思うことは常にある」
新型コロナウイルスの感染拡大の中、大阪府や兵庫県などは医療逼迫の限界に近づきつつある。感染者数はピーク時よりやや減ったが、重症病床の使用率は100%前後で、死者も増え続け、綱渡りの状況が続く。ウイルスは重症化率の高い変異…
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