米国のバイデン大統領は4月17日、菅義偉首相と首脳会談に臨み、日米同盟を強化して中国に対抗する方針を改めて確認した。会談後の共同記者会見で、バイデン大統領は「自由で開かれたインド太平洋の未来を実現するために、我々は、中国からの挑戦、そして東シナ海、南シナ海、北朝鮮などの課題に共に取り組んでいくことを約束した」と発言した。

 インド太平洋における中国の影響力の膨張は勢いを増している。米国が一国でこれに対処することはもはや難しい。そこでバイデン氏は自国を国際協調路線に転換させ、友好国と中国包囲網を構築しようと急いでいる。

 米国のインド太平洋諸国への「再接近」は南アジアでも見られる。これを歓迎し、急速に距離を縮めている国がインドだ。

 米中対立の陰に隠れがちではあったが、トランプ前政権時代はインドと米国との関係もギクシャクしていた。対インド貿易赤字を問題視していたトランプ前大統領は、特恵関税制度(GSP)の対象からインドを除外し、渡米するインド人技術者が多く利用する就労ビザの発給も停止した。

 バイデン氏は就任早々にインドとの関係改善に乗り出した。3月には米国、インド、日本、オーストラリアで構成される「Quad(クアッド)」と呼ばれる枠組みによる首脳会談を実現させ、同月にはオースティン国防長官がインドを訪問している。さらに3月31日に期限を迎えたビザの発給停止について延長せず、その措置を失効させた。

 エネルギー安全保障面でも米国の存在感は高まっている。ロイターの報道によれば、米国産原油の輸入量が急増しており、2月には過去最高を記録。米国はインドにとってイラクに次ぐ第2位の原油供給元になった。「米国産原油の輸入はインドの対米貿易黒字の削減にもつながる。エネルギー分野での両国の結びつきは深まっていくだろう」。キングス・カレッジ・ロンドン教授でインドのシンクタンク、オブザーバー・リサーチ・ファンデーションのダイレクターも務めるハーシュ・V・パント氏はこう指摘する。

 インドは中国の覇権主義に警戒感を強めており、2020年に発生した国境紛争を機に関係は急速に悪化した。インドにとり、国際協調路線に転じた米国は、共通の脅威に直面する手の組みやすいパートナーとなった。

 だがインドが政権交代した米国を完全に信頼しているとは言い難い。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1121文字 / 全文2099文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「アメリカは変われるか 世界を覆う「トランプ後遺症」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。