新型コロナウイルスの感染拡大以降、欧州と中国の関係性が揺らいできた。筆者は昨年、中国との距離感というシリーズで、経済的なつながりから中国と離れられない欧州のジレンマを描いた。

 しかし、年明けに欧州は、従来の関係から一歩踏み込んだ。中国に対して以前より厳しい姿勢を鮮明にしたのだ。欧州連合(EU)と英国は3月22日に、少数民族ウイグル族への不当な扱いが人権侵害にあたるとして、対中制裁を実施。中国当局者などの資産を凍結したほか、EUや英国への渡航を禁止。ラーブ英外相はウイグル問題について、「現代最悪の人権危機の1つ」と指摘した。

 中国はすぐに反応。26日に対抗措置として、EUや英国の政界関係者を対象とする中国への渡航禁止などの制裁を発表。欧州議会のサッソリ議長は米ポリティコに対し、「EUは中国のサンドバッグではなく、脅迫は受け入れられない」と述べた。

 英国とEUが中国に制裁を科すのは、1989年の天安門事件まで遡る。英国は2020年、香港市民に英国での市民権取得を促す方針を表明するなど、中国に厳しい姿勢を示してきたが、EUも従来の曖昧な方針を転換した。

中国で3月下旬から、スウェーデンのアパレル大手へネス・アンド・マウリッツ(H&M)の不買運動が広がっている(写真:AP/アフロ)
中国で3月下旬から、スウェーデンのアパレル大手へネス・アンド・マウリッツ(H&M)の不買運動が広がっている(写真:AP/アフロ)

 EUの強硬路線を後押ししたのは、バイデン政権の誕生である。トランプ前大統領は安全保障や貿易関係でEUと対立し、関係が冷え込んでいた。EUはバイデン政権と連携を強化するため、中国に対する厳しい姿勢を明確にした。

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