米商務省は4月8日、スーパーコンピューターを開発する中国の企業や研究機関など7社・団体を事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト(EL)」に加えると発表した。バイデン米政権が中国を対象にELを拡大するのは初めてだ。政権が交代しても、トランプ前政権が始めた強硬な対中禁輸措置が継続することがはっきりした。米中経済戦争の第二幕が上がった。

 当然、日本企業も禁輸措置の順守が求められる。年配の世代であれば、覇権争いを巡る問題で米国を怒らせたら怖いことを知っているはずだ。

 冷戦時代の1987年当時、米国が覇権を争っていた旧ソ連に、東芝機械(現・芝浦機械)が潜水艦の静音性を高める工作機械を輸出していたことが発覚。共産圏に西側各国の戦略物資が漏洩するのを防ぐココム協定に違反したとして、米国内で強烈なバッシングを浴びた。東芝機械は対米輸出が、親会社の東芝は米政府と取引が禁じられるなど、厳しい制裁を科せられた。

「東芝機械ココム事件」て゛東芝を強く非難する米議員ら(1987年、写真:AFP/アフロ)

 米中の新冷戦に突入した現在、米国政府はハイテク分野で中国への禁輸措置を強化する。「東芝機械ココム事件」のトラウマが残る日本の産業界には、米国の意向に背くという選択肢は事実上存在しない。

 一方で、中国政府も1月、米国の禁輸措置などに同調した外国企業を相手に、中国企業が損害賠償を請求できる新たな規則を施行した。中国政府も新規則に基づき報復措置を取れるようになったことは前回お伝えした通りだ。

 米国政府の意向に従いながらも、中国の政府や顧客にもにらまれない。そんな曲芸のような振る舞いが求められる日本企業が、相次いで経済安全保障関連の専門部署を立ち上げている。米中が次々と打ち出す新たな輸出規制の動向を正確につかみ、現場に周知する役割を担う。これにより、米中双方の輸出規制に抵触するのを防ぐ。

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