取締役や幹部候補の採用を早急にお願いしたい──。「イモトのWiFi」で知られる海外用モバイルWi-Fiレンタルサービスのエクスコムグローバル(東京・渋谷)は3月2日、滝澤美保さんと業務委託契約を結んだ。契約期間は6月まで。仕事の中身は取締役候補者を探し出してくることだ。

 取締役のようないわゆるエグゼクティブ採用には、相応の経験が必要とされる。だがエクスコムグローバルにはそうした経験者はいない。そこで同社が頼ったのが外部人材である滝澤さんだった。1週間の総労働時間の目安は24時間程度。報酬は月に30万~50万円で、出社するかリモート勤務するかは滝澤さんが決める。滝澤さんが人選を進め、これと思った人材を最終の社長面接に送り込むのがミッションだ。

滝澤美保さん。大手流通企業などで人事畑を歩み、一昨年に組織人から卒業した
滝澤美保さん。大手流通企業などで人事畑を歩み、一昨年に組織人から卒業した

 滝澤さんは人事のプロだ。新卒で東証1部上場の大手流通企業に入社。20年弱勤める間に商品企画やバイヤー、そして本社人事などの業務をこなした。人事では課長まで務めている。その後「仕事は大好きだし楽しかったが、1つの会社、1つの業界しか知らないのは後悔するかもしれない」と40歳にして転職を決めた。狙いを定めたのは「転職の観点からすると、キャリアを積み上げるのがいいのかな」と人事の仕事。その後、いくつかの会社で人事部長などを務め、19年10月に最後の会社を辞めた。

 約30年、会社員として働いてきた滝澤さん。なぜ組織人を辞めようと思ったのか。人事部長という社内キャリアで「いくところまでいった感じもあった」のに加え、「50歳を過ぎて、自分の成長よりもここまで育ててくれた周囲に恩を返したいと素直に思った。自分の持っているノウハウを必要としているところにできるだけ多く放出したい。となると、1つの組織の中という選択肢はなかった」。

 だが組織大好き人間だったという滝澤さんにとって、組織を抜けることは「どうなるか分からず不安というか、足元がおぼつかない感じ」だった。一方で「仕事は選ばなければなんとかなるだろう。希望する仕事がなかったらパートで稼げばいい」という考えもあった。

 結果はどうだったか。まず19年12月から人事業務の部分代行をスポット的に始めた。多くは大手企業の人事業務の一部代行で、人事研修の講師や面接官やリクルーターの教育担当などだ。大手企業に関わり続けることで「成熟した企業の人事の在り方を、まずは忘れないようにしておこう」という狙いもあった。

 また「人材教育は企業の業績向上には欠かせないのだが、人事は直接数字を作らない。自分自身が数字を作る事業側の経験もしたい」と、あるベンチャー企業の事業戦略作りの仕事も始めた。

 さらに今年1月からはITベンチャーでエンジニアの採用も業務委託で始めた。業務は基本リモートで、月間100時間程度を費やす契約だ。当初は単に採用業務だけだったが、会社が急成長中で人事制度自体も構築し直す必要があるため、人事の基盤づくりも頼まれて仕事の幅を広げている。そして3月からは前述のエクスコムグローバルの仕事も加わった。

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