ホテルの部屋でオーナーと相談する酒匂さん(右)と平良さん(左)
ホテルの部屋でオーナーと相談する酒匂さん(右)と平良さん(左)

夢は1つでなくていい

 石垣島には大企業はなく、会社員に代表されるように死ぬまで1つの職業でやっていくのはなかなか難しい。みながごく自然に複業という人生を歩むことが多いという。冒頭、ハンディの企画で打ち合わせをしていた森河さんも、ダンサー以外にヨガのインストラクター、カメラマン、そしてALOALO BEACH川平のカフェの店員という複数の顔を持つ。

 酒匂さんが開業を支援しているリゾートホテルのプロデュースなどを手掛ける平良静男さんも、石垣島でジュエリーショップの社長、飲食店を含めた店舗プロデュース、地域おこしとさまざまな仕事をしている。「複業が、ごく当たり前のように行われている」石垣島の実態は、まさに今の酒匂さんに向いていたのだ。

 石垣島での生活が軌道に乗り始めてきた今、思うことがある。子供のころに「将来の夢は?」と聞かれて、みな何か1つに絞って答えていた。しかし「夢はたくさんあって、たくさんかなえてもいいのではないか」。それが経済用語でいうと複業になるのではないだろうか、と。終身雇用という日本独特の仕組みが制度疲労を起こしている今、こうした働き方を選択肢に入れる人は増えてくるに違いない。

 電通のNHのように、企業側でもそういう個人の決断を後押しする動きは広がる可能性がある。酒匂さんも「NHの制度ができなければ、電通を辞めていたか分からない。おかげで余裕を持って仕事を始められた」とNHの新設が背中を押したと振り返る。

 脱サラや独立は、普通の感覚でいえば人生の大きな挑戦のはず。しかし、それを最もコンサバな選択として決断したという酒匂さんのような価値観も、これから少数派とは言えなくなってくるのかもしれない。

いくつもの仕事を掛け持ちして生計を成り立たせる働き方、「複業」が広がる気配を見せている。副業の一歩先の働き方、とも言える複業を可能にしたきっかけは新型コロナによるリモートワークの浸透だ。シリーズ「副業から複業へ、新たな働き方は広がるか」では、複業に取り組んでいる人たちの実態を紹介する。

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