イタリア統一にふさわしいのは誰か
当時、イタリアは多くの小国に分裂して混乱していました。本書においてマキャベリは、抽象的な君主像を説くのではなく、イタリア統一を実現し得るのはいかなる君主かという視点から、ギリシャ・ローマ時代からの歴史上の実例を数多く挙げ、その成功・失敗理由を分析して、多くの具体的な提言を行っています。
もともとは共和主義者だったマキャベリですが、国の混乱した現実に直面することで、ボルジアのような、強力な君主によるイタリア統一が必要だと考えるに至りました。
君主が善良で慈悲深い人間であることは称賛すべきだとしつつも、現実を見ればそうした君主は必ず没落するとして、愛される君主より恐れられる君主のほうが安全だといいます。人間は利己的で偽善的であり、たとえ従順に見えても利がなくなれば反逆しますが、君主を恐れていれば反逆しないからです。政治の決断には非情であってもぶれない姿勢が重要だと考えていたマキャベリは、その冷酷さで誰からも恐れられたボルジアこそ、理想的な君主像だとしたのです。
ボルジアは聖職者になるために育てられ、枢機卿にまで上り詰めましたが、23歳の時に還俗(げんぞく)しヴァランス公爵となった人物です。1499年からロマーニャ地方統一に向けて進撃を開始。イモラ、フォルリ、チェゼーナ、ペーザロ、リミニ、ファノ、ファエンツァ、ボローニャ、ウルビーノ、カメリーノを支配下に置き、ロマーニャ公爵となりました。レオナルド・ダ・ヴィンチを土木建築技師として迎えて所領地の整備を進めるなど、イタリア統一を視野に入れていましたが、31歳で戦死しました。
Powered by リゾーム?