(写真:PIXTA)
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 日本企業はこれまで、自動車メーカーや電機メーカーを中心にサプライチェーンのグローバル化を推進してきた。特に1980年代後半以降、テクノロジーの発展によってコミュニケーションコストが低下したことから、製造工程を複数の国に移管し、サプライチェーンの全体的な最適化を図る動きが当たり前となっている。

国際協力銀行の資料を基にPwC作成(<a href="https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2020/0115-014188.html" target="_blank">https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2020/0115-014188.html</a>)
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新型コロナでサプライチェーンのリスクが顕在化

 こうしたサプライチェーンのグローバル化は、海外市場への参入や国内人件費高騰への対応策として、必要に迫られた動きとも言える。アジア・太平洋地域を中心とした安価な原材料費や労働力は魅力である。ただ、これらのメリットを得た引き換えに日本企業はリスクを負うことになった。

 1つはサプライチェーンの距離が延伸したことである。原材料・部品から1つの製品が完成するまでに複数の国や地域を経由することになり、途中で断絶する危険性が高まった。もう1つは供給元の偏りである。アジア、特に中国に原材料・部品の供給元が集中し、他地域での製品の生産・販売が、製造工程の上流からの供給量に左右されることになった。

 今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行は、これらのリスクをより顕在化させた。世界をまたいだグローバルサプライチェーンは寸断され、日本においても、国内への供給が停止することでビジネスに多大な影響を被った企業は少なくない。

 今回は、グローバル規模でのSCM(サプライチェーン・マネジメント)を行う上で担保すべき「レジリエンス=強靭(きょうじん)性」を切り口に、企業に求められる対応を考える。

サプライチェーンで保持すべきはレジリエンス

 サプライチェーンの寸断を引き起こす原因として、新型コロナウイルスをはじめとする感染症リスクや地政学リスクなどは今後も発生すると考えられる。これらは自社で短期間に解決できる問題ではないため、リスクを根絶した上でサプライチェーンを維持するという考え方は現実的ではない。一方で、リスクに対処するためにすでに網の目のように張り巡らされたサプライチェーンを抜本的に変更するというのも、困難を極める。

 このような状況において、企業が既存の仕組みを生かしながらアフターコロナ/ウィズコロナ時代を生き残るために意識すべきキーワードが、連載第1回で取り上げた、ウィズコロナ時代に求められるサプライチェーンの5つの要件のうちの1つである「レジリエンス」である。

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 ここではレジリエンスを、「有事の際の影響を最小限にとどめ、ビジネスの継続性を高めるための、各種代替候補の確保、余剰・冗長性の担保」と定義する。サプライチェーンにおけるレジリエンス向上のための主要な施策としては、下の図のように「複線化」「ローカル化」「在庫の積み増し」がある。順に内容を紹介する。

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この記事はシリーズ「ウィズコロナ時代のサプライチェーンマネジメント」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。