「コマンドコックピット」機能の導入を

 上記フレームワークの5つの要件のうち、代表的な施策について2つ紹介したい。

 1つ目は「バリューチェーンシナリオプランニング」にあるような、サプライチェーンリスクが顕在化した場合のシナリオのバリエーション強化と、それぞれの影響度に応じた実現性の高いアクションプランの策定だ。シナリオ策定の際には、これまで作成してきた際に活用していた従来の観点をあらためて検討し直す必要がある。

 従前のサプライチェーンリスクは自然災害やサイバー攻撃などを想定していたため、影響度は大きいものの影響を受ける期間は短いと言えた。しかし今回の新型コロナ感染症の場合、影響度は莫大ではないかもしれないが影響を受ける期間が長いという特徴がある。従属的に発生したリモート対応をはじめ、ワークスタイルの変化や企業としての社会的責任に伴う対応も、シナリオの要素に含める必要がある(下図)。

シナリオ策定に考慮すべき内容の変化
シナリオ策定に考慮すべき内容の変化
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 新型コロナは感染が世界に広がっており、どの国も大きな影響を受けている。世界同時的/地域別に感染が広がるケース、緊急時から平常時に戻るケース(またはその逆)、短期間で状況が反転するケースなど、盛り込む要素に加えて用意すべきシナリオのパターンの幅広さへの対応が不可欠である。

 こうしたシナリオプランニングを行うことで有事の際の課題を事前に洗い出し、バリューチェーン再構築のための投資、保持すべき体制、アクションに関する詳細計画を立案することによって、実際の発生時にも落ち着いて対応することを可能とし、事業と経営のリスク低減につなげることができる。

 2つ目は「アジリティ」を実現するための「コマンドコックピット」機能の導入である。

 新型コロナが感染拡大する状況においては、以前から必要とされていたサプライチェーンのコントロールタワー(サプライチェーン全体を俯瞰=ふかん的に管理する役割)の機能に加えて、リスクマネジメントや上述のシナリオプランニングにおける権限も含めた強力な機能を集約した、コマンドコックピットの設置が有効である(下図)。この新たな機能に最新情報を集約し、状況を判断しながらグローバル全体でのサプライヤー、生産拠点、物流経路のダイナミックな切り替えを実行していく体制を組むことで、状況ごとに最適化したSCMの実現が近づくと考える。

 新型コロナの感染状況とサプライチェーン上の動きをモニタリングし、各社にとって重要な対応のアジリティ=敏しょう性を実現するためには、次の3つをサイクルとして回していくことが必要になる。

  • コマンドコックピットにおいてダイナミックに判断を行うに足る各種情報のリアルタイムでの集約・分析
  • 判断後の指示・命令がダイレクトかつ実効性をもって現場の動きにつながる組織的な取り組み
  • 実行後の結果のフィードバックとしての可視化

 単発のBCP対応とは異なり、新型コロナ感染症の特性に基づいてサプライチェーンにおける継続的なアクションが求められるからこそ必要になる機能と言える。

コマンドコックピットのイメージと持つべき機能
コマンドコックピットのイメージと持つべき機能
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