札幌の女子高生ユニットがいきなり海外の週間チャートで首位になった。彼女たちは、簡単な機器を使って自前で楽曲を作り、ネットにアップする。こうした“DIYアーティスト”が既存のレコード会社を脅かす存在になりつつある。
「こんなに多くの人に聞いてもらえるなんて、思ってもいなかった」。こう話すのは、女子高生2人組のテクノバンド「LAUSBUB(ラウスバブ)」のボーカル、高橋芽以さんだ。
トラック制作を担当する岩井莉子さんと、2020年12月に「Telefon」という楽曲を発表。すると、21年1月にドイツの音楽共有サービス「サウンドクラウド」の週間チャートで、韓国のボーイズグループ「BTS」などを抑えて首位を獲得した。

「サウンドクラウドで良いバンドを見つけたら女子高生だった、すごい」。こんなツイッター上の投稿をきっかけに、Telefonの再生数が急増した。ラウスバブの2人は北海道在住の高校2年生。レコード会社にも所属しないまま、知る人ぞ知る存在となった。
ラウスバブの結成は20年3月で、まだ1年しかたっていない。2人は同じ高校の軽音楽部に所属し、別のバンドで活動していた。新型コロナウイルスの影響でライブハウスでの演奏の機会がなくなり、学校に集まって曲を制作したり練習したりするのも難しくなった。
2人が目を付けたのがテクノ音楽。岩井さんが日本のグループ「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を入り口にはまり、高橋さんも岩井さんの影響を受けた。テクノ音楽であれば、楽器がなくても曲を作れる。自宅でも、遠隔でも制作しやすい。さらに2人は、発表の場をライブハウスでなくネットに決めた。
「ゴールデンルート」に頼らない
この高校生ユニットのように、レコード会社などに頼らず曲を自作して配信する“DIYアーティスト”が、急にネット上でヒットを飛ばすことが増えた。
従来のようにレコード会社がライブハウスを回って発掘するわけでもないし、ラジオやテレビ番組への出演を通じてPRするわけでもない。こうしたヒットへの「ゴールデンルート」は、もはや古い手法になりつつある。
ビジネス上の力関係で見ると、レコード会社からアーティストへとパワーシフトが起きている。レコード会社は存在意義を脅かされているのだ。こうした“DIYアーティスト”が誕生するようになった理由は3つ考えられる。
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