CD・DVD市場は15%減に

 20年、ライブ市場をあわや消滅というところまで追い込んだコロナ禍。実はCDの販売にも大きな影響を及ぼした。

 日本レコード協会によると、CDやDVDなど国内の音楽ソフト売上額は、20年に19年比15%減の1944億円へと落ち込んだ。落ち込み幅はここ10年で最大。ピークの1998年(6074億円)からは68%の減少で、レコード会社などを苦境に陥れた。

 要因の1つは、1回目の緊急事態宣言などの影響で創作の活動そのものが止まってしまったこと。2020年4~6月の落ち込みが深刻だった。さらに、ライブを実施できないことで、「握手会」のような販売促進のイベントも開催できなかったという背景がある。

 オリコンが年末に発表するシングルCDの年間売り上げランキング。上位の顔ぶれを見ると、19年は「AKB48」「乃木坂46」など、CDに「握手会」などイベントの参加権を付けて販売するアーティストが多数を占めた。だが、20年のランキング上位からは、そうしたアーティストの作品の数が激減した。

握手会などの販促イベントができなくなったことも、CDの売り上げが落ち込んだ要因の1つだ(写真:PIXTA)
握手会などの販促イベントができなくなったことも、CDの売り上げが落ち込んだ要因の1つだ(写真:PIXTA)

 スーパー銭湯でのライブで知名度を上げた歌謡アイドル「純烈」のように、全国のCDショップやショッピングモールを回り、楽曲を披露しながらコツコツと稼ぐ歌手も多い。「アーティストとファンのリアルな場での接点がなくなる打撃は小さくない」(日本レコード協会担当者)

 音楽ソフト市場は、かつてはCDのレンタル、今は音楽配信サービスの影響を受けて縮小し続けている。この流れにあらがうため、レコード会社やプロモーション会社などがライブや握手会を盛り上げてきたのだが、その動きはいったんストップした。

 ライブハウスが破綻し、市場は大幅に縮小したが「音楽ライブは死んだ」という見方は少ない。ただし、接触を避けるニューノーマル(新常態)の中で、どこまで需要が戻るか不透明というのも事実だ。

配送ドライバーに転職、自社ビル売却……

 音楽事業者がコロナ禍に苦しむのは世界共通。海外事情に詳しい関係者によると、英国の有名歌劇場「ロイヤル・オペラ・ハウス」で舞台に立ったこともあるオペラ歌手は公演が全てなくなり、動画配信サイトが運営するオーディオポルノの声優へ転職を決めた。米アマゾン・ドット・コムの配送ドライバーになった歌手もいるという。

 日本では、レコード大手トップ3の一角を占めるエイベックスが、21年3月期に70億円の営業赤字を計上する見込みだ。このため、17年に竣工したばかりの東京・南青山の自社ビルを売却する方針を決めた。

 ただ、音楽ビジネスの地殻変動はこれから本格化する可能性が高い。

 変化を引き起こすのはCD販売やライブの減少だけではない。どこからともなく突然現れ、ヒットを飛ばすアーティストたちがその主役だ。

 連載の2回目では、海外のある週間チャートでいきなり首位となった日本の女子高生ユニットに焦点を当て、音楽市場の変化を読み解く。

この記事はシリーズ「変わる音楽ビジネス ヒットの新潮流」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。