売り上げも増えないのに毎年数十種類の新商品を開発

 同様の話は枚挙にいとまがありません。これは国際物流大手のDHLの上席者と大手医薬品メーカー、サノフィの人事担当が、私の雑誌で鼎談(ていだん)をしたときのエピソードです。

 

 サノフィの方が「欧米だと箱の中の薬がはみ出たりしていたらクレームになるが、外箱が多少へこんでいても文句を言う顧客はいない。日本は厳し過ぎる」と語ったのです。

 

 それを受けたDHLの方は「いやいや、日本だと配送用の段ボールがへこんだだけで文句を言われる。だから要注意で配送を行うときは、『今回はジャパニーズ・グレードで送れ』と言ったりします」と答えていました。こんなにも顧客本位で非生産的な「配慮」を日本人はしているのです。

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 またP&Gやネスレの方たちと話していて気付いたことですが、日本はあまりにもスナック類の商品寿命が短い。ポテトチップスなどはそれこそ週替わりで製品が出ているのはご存じですか? オレンジマーマレード味、韓国ノリ味、トムヤムクン味……。大手スナックメーカーであれば、ポテトチップスだけで年間数十の新製品を開発しているでしょう。ただ、売り上げは増えていません。しかも、翌年のラインナップに残る確率は1割もない……。日本は、卸業者や量販店チェーンの要望にしたがい、季節商品を湯水のように作っているのです。

 一方、海外だと、プリングルズでもキットカットでも、商品ラインナップは何十年も変わらず、たった数種類です。いくら作っても売り上げなどさほど増えないから無駄なことはやらない。

 果ては農業にまで同じことが言えるでしょう。日本は曲がったキュウリや、へこみのあるトマトは市場に出回りません。味や鮮度に問題なくとも、ですよ。欧米はそんなことはお構いなしに食品棚に並べられます。結果日本の農家は、曲がらないよう、へこみができないよう、収穫品を選別し丁寧に梱包して農作業時間が増していく……。

 

 つまり、顧客の要望に真面目に向き合えば向き合うほど、生産性は下がるのです。日本なら顧客から「明日までにお願いします」と言われれば、それに付き合うしかない。こうした無理難題を会社や上司が引き受けてきたとき、それを部下は断ることができない。それで部下が長時間残業をすることになったとしても、前述した通り、そもそも日本の超過勤務手当はとても低い水準に抑えられる仕組みになっており、しかも、その安い手当さえも払わない(=サービス残業)企業も少なくありません。だから、「顧客本位」で「上司」がつくり出した残業が減らないのです。

本記事は日経BPのオンラインサイト、Human Capital Onlineの連載「人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~」から、一部修正して転載しました。

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