JDは1980年代にその役割を終えた

 こうした状況に対して、私の雇用ジャーナリスト仲間で、北米を主にウオッチするデイビッド・クリールマン氏(クリールマン・リサーチ責任者)は、「1980年代にJDはその役割を終えた」と言い切ります。そう、ブルーカラー全盛時代は(とりわけ欧米では)定型的で平明にタスクを列挙できましたが、ホワイトカラー主体になって、それは難しくなったという意味です。

 日本板硝子の中島豊氏(執行役兼最高人事責任者グループファンクション部門人事部統括部長/シティグループ証券、ジブラルタ生命保険等を経て現職)は、「現在のそれ(JD)は、職務範囲や責任など、上位概念を書く」と言います。

 今度は「職務記述書(JD)」と職務内容について調査した研究「諸外国の働き方に関する実態調査」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング実施、佐藤博樹氏)を見てみましょう。英米仏独蘭の5カ国について調べており、総論には以下のように記されています。

「職務記述書の内容は、一般的・概括的・抽象的であり、それに加えて『その他使用者の命じる事項』(米国)や『あらゆる種類の作業』(オランダ)、さらには『企業は契約書に記載した以外の課題を被雇用者(労働者)に指示することができる』(ドイツ)といった包括条項が記載されている」
「担当する業務が職務記述書によって限定化・固定化・特定化されているわけではない。そのため、職務記述書に記載されている一般的・概括的・抽象的な職務の範囲内で、従業員が担当する業務は、管理職による仕事の割り振りなどによって柔軟に変更される

 そろそろ、「JDで記述されたジョブ」は幻想でしかないと、分かってもらえたでしょうか。

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