変化が激しい現代、タスクは固定できない

 「明確なタスクで示されたジョブ」の第2の誤りは、時期や年度、もしくは案件などにより、全く異なるタスクが随時発生するということです。

 最初に例示した求人広報であれば、昨今は新型コロナ対策で面接もオンラインで行うようになってきました。旧来のJDにはそもそもオンライン面接という言葉は入っていないでしょうし、ネット環境の整備やセキュリティー管理などのタスクも新たに発生します。こうしたタスクについて担当者から「書いてないからやりませんよー」と言われたら、組織は回らないでしょう。かといって、時期・年度によって変化を予測し、あらかじめJDを書き換えるなどということもできはしません。

 欧米でもこうした問題が生まれていて、結局、もう数十年も前から、ジョブとは教科書でいわれるようなおとぎ話とは大きく異なってきているのです。

欧米のあまりにも曖昧なJD

 私は長い間、リクルートグループで転職エージェントの企画に携わっていました。そこには外資系企業からあまた求人が寄せられます。求人票に添付されているJDを多々見ながら「あー、これじゃとても中身など分からないし、マッチングには使えない」と痛感させられたものです。事例を2つ見てみましょう。

 まずはある会社のプロジェクトリーダーのJDです(原文は英語)。

■仕事名称:
新装置の導入プロジェクトマネージャー

■ミッション:
・日本でのホットメルト装置の設置工事において、候補者は現場での工事運営、監督と技術管理を工事前~工事中に行う
・仕事上の安全管理、レイアウト、調整などをEPCM(建設包括契約)にかなうよう、計画を具体的なスケジュールに落とす業務を全て担当し、建設会社およびその他関係者に資本プロジェクトを告示し、合意を取って、落としどころを割り出す
・その他のプロジェクト委員会や、現場での作業者、予算管理者との接点役として行動する
・プロジェクトの進行に滞りが起きないよう、現地チームを調整管理する責任がある

■仕事:
・会社規定の安全プログラムをプロジェクトの期間中は必ず守る
・短い期間で成果を発揮できるようなスケジュールを考案する
毎日起こり得る現場での問題を解決する
・つつがなく許可を得られるよう、現地の司法検査官や周囲の会社の代表と関係をつくる
・問題を明確にし、プロジェクト委員会で取り上げ、解決策を探す
・解決策を試し、その案が適切であり、委員会の許諾を得ているか確認する
・事前の取り決めに沿い、プロジェクトが引き返せる(代替)案を提供する
・プロジェクトの予算内に納まるよう動く。スケジュール進行の申し送りを確実にする
・プロジェクトのプランを管理、アップデートし、批判されそうな事柄を把握し、常に修正を行いプロジェクトが締め切りに間に合うようにする
・役人と管理者へのプロジェクトのレビューを準備する

 JDにタスクとして挙げられたものは、どれも「何をどこまでやればいいか」が平明に分かるようなものではないということが一目で分かるでしょう。なかんずく「毎日起こり得る現場での問題を解決する」などという記述に至っては、本当にタスクといえるのか目を疑いたくなる代物。ある程度複雑化したホワイトカラーの仕事はとてもJDでは表せないことがよく見て取れますね。

 次は人事部のアシスタントクラスのJDです。

■職名 人事スタッフ
■上長 人事課長
■やるべき仕事
・リクルートの手伝い関連する事務仕事も担当する
・リクルート費用の管理と、応募者の面接及び以降の進捗
・学校に定期訪問し、親しい関係を維持する
・研修プログラム等を考え、磨き上げ、導入する
・英語インストラクターと毎週の英語レッスンを管理構成する
・人事マネージャーを人事制度と福利厚生の面で手伝う
他の人事や一般管理の仕事も任された場合行う
・電話の応答と落とし物の管理
・人事の方針の下、社会保険と従業員管理を遂行する

 こちらも記述は曖昧です。「リクルートの手伝い」とはあまりにも具体性のない言葉。そして「関連する事務仕事も担当する」「他の人事や一般管理の仕事も任された場合行う」……。全く「何をどこまでやるべきか」が分かるような記述ではありません。アシスタントレベルの職務でもこれくらい大ざっぱに書かれているのが、現代のJDなのです。これでは日本企業の仕事とそれほど変わるものではないでしょう。

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