星野リゾートの星野佳路代表はエンパワーメントを組織の軸に置くことで事業を伸ばしてきた。参考にしてきたのが米国の経営学者、ケン・ブランチャード氏の著書だ。星野氏とブランチャード氏が今回、初めて対談。エンパワーメントの勘所や意義について話し合った。

星野氏(左)とブランチャード氏がZoom経由でじっくり語り合った(写真:栗原克己)

星野佳路氏(以下、星野):1980年代に米コーネル大学のホテル経営大学院で学んでいた時に、ブランチャードさんの理論を読む機会がありました。その後、日本に帰国した私は父のビジネスに加わりました。星野リゾートの前身で、私の故郷である軽井沢にある星野温泉旅館です。

 31歳で事業を引き継いだ当初から、たくさんの課題を解決しなければなりませんでした。マーケティング上の課題もありましたが、最も重要なのはヒューマン・リソースに関することでした。

 特に深刻だったのは、どうやって社員を雇用すればよいのか、でした。当時は離職率がとても高く、大半の社員が働くことにあまりモチベーションを持っていませんでした。会社へのロイヤルティーも、とても低い状況でした。そんなとき、私は軽井沢の書店で、米国で理論に触れていたブランチャードさんの著書『1分間エンパワーメント』を見つけました。これがブランチャードさんの理論を私が自社に導入するきっかけとなりました。結果が出るまでにはかなりの時間がかかりましたが、本の内容を守ろうと心に決め信じ続けたことで、素晴らしい成果を得ました。今ではブランチャードさんの本と理論の大ファンです。

『社員の力で最高のチームをつくる――〈新版〉1分間エンパワーメント』
人が本来持つ知識や意欲などのパワーを引き出す=エンパワーメントによって組織を再生する方法をストーリー仕立てで示す。エンパワーメントには3つの鍵があり、それを徹底する。(1)全社員と正確な情報を共有する(2)境界線を引いて、自律的な働き方を促す(3)階層思考をセルフマネジメント・チームで置き換える。エンパワーメントの実現には困難な時期が来ることもあり、これを切り抜ける覚悟を固めておくも説く。

ケン・ブランチャード氏(以下ブランチャード):理論と実践がつながったのは素晴らしいことです。私が長年かけて気付いたのは、効果的なリーダーシップとは、「私」ではなく「我々」について語るものであること。そして、エンパワーメントとは、部下が「すべき」ことをさせるのではなく,部下が「したい」と思えることをしてもらうという事実に向き合うことです。

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