企業の“不謹慎な行為”への消費者の行動は、ネットでの炎上だけにとどまるわけではない。とりわけコロナ禍では、標的にした企業や店舗への物理的攻撃を仕掛ける人も増えている。事件化するリスクを顧みず行動する彼らのエネルギーはどこから来るものなのか。

千葉県八千代市の駄菓子店「まぼろし堂」。コロナ前は地元の子供たちの憩いの場だったが……

 「張り紙を見たときのことは今でも夢に見る。思い出しただけで胸が押しつぶされそうになる」。千葉県八千代市で駄菓子店「まぼろし堂」を営む村山保子さんは重い口調でこう話す。

 「コドモ アツメルナ オミセ シメロ マスクノムダ」――。赤のマジックペンで、定規を使ったような直線的な字で書かれたその張り紙を見つけたのは2020年4月28日のことだった。竹林を切り開いた一角に建てられた店の入り口は、トタン板の門扉。張り紙はそこに粘着テープで貼り付けられていた。

 開業は12年9月。75歳になる村山さんは長年、専業主婦だったが、「老後の生きがいが欲しい」と息子たちの協力を得ながら店を構えた。店内には駄菓子店らしく、小学校風の机や椅子を並べ、屋台スペースも確保。「焼きおにぎり」や「たこ焼き」といった子供たちに人気のあるメニューをそろえた。

「張り紙を見つけたときのことを思い出すと今でも胸が押しつぶされそう」と語るまぼろし堂店主の村山保子さん

 まぼろし堂があるのは、東葉高速線の八千代緑が丘駅から北東に3km弱の田園地区で、客商売をする上で特別有利な立地とは言えない。それでもコロナ前までは、放課後になると数km離れた地域からも子供たちが集まり、土日も家族連れでにぎわってきた。もうけは決して多くはないが、村山さんは強いやりがいを感じていた。

メディアの応援報道が仇になった可能性

 状況が変化したのは20年に入り、コロナ禍の影響が広がり始めてからだ。

 3月半ばまでは、来店する子供たちにマスクを無償で配りながら時々店を開けていた。毎年花粉症に悩まされてきた村山さんはシーズン前にマスクをまとめ買いするのが慣例。世間のマスク不足を知り、少しでも子供たちの役に立ちたいとも思ったという。

 ただ、そのことが「コロナ禍で奮闘する小さな駄菓子店」として一部メディアで取り上げられ、「まぼろし堂」の知名度は、常連客以外にまで広がってしまう。「あれで、コロナ禍で店を開けるなんて不謹慎と一部の方に思われたのかもしれない」と村山さんは話す。

 実際には、まぼろし堂は、営業自粛の要請を受けた「飲食店」に該当しないにもかかわらず、3月28日以降は休業に入っていた。だが、商品の賞味期限管理や店内の清掃のため村山さん自身は1日おきに店に出ていたという。報道などを通じてまぼろし堂のことを知り“義憤”に駆られた犯人は現地を訪れ、そんな店主の姿を確認。まだ店が開いていると誤解し、犯行に及んだとみられる。

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