今は炎上していなくても将来のリスクを見込み、商品やサービスの中身を見直す。社会の変化に敏感な先進企業の間では、そんな動きも見受けられる。その結果、昭和の時代から慣れ親しまれた商品名が消える事態も起きている。

20代後半以上の読者であれば、小学校などで使った色鉛筆やクレヨンの中に「はだいろ」があったことを記憶しているはずだが……

 2019年1月、テニスの大坂なおみ選手がアニメキャラクターとして登場する日清食品のカップヌードルのCMが物議を醸したことは記憶に新しい。ハイチ系米国人の父を持つ大坂選手の肌を実際よりも白く描いたことが問題視されたのだ。

 「肌の色の表現については、そのまま描くことが一番のリスペクト。不自然な加工をしてはいけない」。『アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ』などの著書を持つ富山大学の赤尾千波教授はこう話す。

 日清食品広報は「意図的に白くした事実はない」とした上で、「配慮が欠けていた。今後は多様性の問題に、より配慮したい」と謝罪。大坂選手自身も「日清食品側が意図的に『白人化』したとは考えていないが、今度また私を描いたりすることがあれば、その時は私に相談すべきだと思う」と言及する事態になった。

「えっ、『はだいろ』って今はないの?」

 改めて問題のアニメ画像を見ると、大坂選手の肌は、日本で言ういわゆる「はだいろ」で表現されている。この「はだいろ」、文具業界では20年以上前からその名称自体が既に変更されていることをご存じの方はどれだけいるだろうか。

 「え、クレヨンや色鉛筆の『はだいろ』って今はないの?」。50代の主婦はこう驚きを隠さない。20代後半以上の読者であれば、小学校などで使った色鉛筆やクレヨンの中に「はだいろ」があったことを記憶しているはずだ。文具業界でその呼び名が変更されたのは2000年前後からで、「うすだいだい」や「ライトオレンジ」「ペールオレンジ」と表記されるようになった。

 当時はまだネット黎明(れいめい)期。文具業界も「肌の色は多種多様なのに、特定の色を『はだいろ』と呼ぶのは不謹慎」といった炎上がSNS上で起きた結果として、変更に踏み切ったというわけではない。業界自身が「多様性の時代」の到来を予見し、リスクを最小化するため自ら修正したのだ。

 文具における「はだいろ」という呼称の歴史は古く、絵の具とクレヨンでは1951年から、色鉛筆では53年から当時の日本工業規格(JIS)が定めた色名に存在していた。90年代に表記変更が議論された際は、「長年使われてきた色名は守るべきだ」「他にふさわしい色名がみつからない」という声もあったという。

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