社会の変化により、消費者が「不謹慎と感じること」の範囲が急速に広がっている。昭和の時代なら称賛されたはずの商品名が、問題とみなされるケースも少なくない。その是非を巡りネット上で論争が起きれば、商品イメージにも良い影響はもたらさない。

ファミリーマートの「お母さん食堂」は成長する中⾷市場を攻略するために開発された戦略商品だ

 全国1万6000店舗以上を構え、コンビニエンスストア業界でセブン-イレブン・ジャパンに次ぐ規模を持つファミリーマート。その食品コーナーに、同社のプライベート総菜ブランド「お母さん食堂」が登場したのは2017年9月のことだ。

 単身世帯の増加などを背景に10兆円まで拡大した国内中食市場。そんな成長分野を攻略するために開発された戦略商品だ。「調理の手間を省きたい」「必要な分だけ欲しい」という消費者の要望に応え、夕飯にそのまま出せる食べきりサイズの総菜を豊富にラインアップ。それまで湯煎のみに対応していたシチューやハンバーグなどを電子レンジで加熱できるようにもした。

 「小さいころ、お母さんが作ってくれたような自然で、温かみがあって、美味しいお惣菜であること」「仕事と子育ての両立で忙しいお母さん達が、子供や家族みんなに安心して食べさせられる食事であること」――。こうした思いを込めて付けられたのが「お母さん食堂」というブランド名だ。

 おいしさや利便性のみならず、多くの人の郷愁を誘うネーミングにも心を引かれ、発売以来約3年、同シリーズを愛用してきたファミマファンもいるに違いない。

 それだけに20年暮れ、「お母さん食堂」という商品名の是非を巡ってネットで論争が突然起きたとき、何が起きたのか戸惑った人もいたのではないだろうか。

「ジェンダーバイアス」を助長する表現

 論争のきっかけとなったのは3人の高校生だ。「ガールスカウト日本連盟」が主催した男女平等に関するプログラムに参加した3人は、ファミマの店内に掲げられている「お母さん食堂」という看板を見て、「このままでは、『お母さんが食事を作るのが当たり前』という意識を社会に植え付けてしまう」と感じた。

 要は、「お母さん食堂」という商品名は、「男は外で働き妻子を食べさせる」「女は家事をこなし子供を育てる」といった、男女の役割に関する固定的な観念「ジェンダーバイアス」にとらわれた表現であり、かつそうした風潮を助長しかねないブランド名である、と受け止めたわけだ。

 その後、3人は同連盟の協力の下、「商品名が社会に与える影響を企業にも知ってもらい、ジェンダー問題をなくしていきたい」と、ファミマに対しブランド名の変更を求める署名活動を開始した。

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