一からの出直し

 VAIOブランドのパソコンを手掛けていたソニーが不振のパソコン部門を投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP、東京・千代田)に譲渡すると決めたのは2014年2月。JIPが95%、ソニーが5%を出資する形で同年7月に新会社のVAIOを設立した。

 世界で年間500万台以上を販売していたソニーのパソコン事業は、14年3月期の売上高が4182億円で、国内だけで約1100人が関わっていた。海外から撤退し、国内だけで販売する体制で再スタートを切ったVAIOに残っていた社員は240人。売上高は初年度(15年5月期)にわずか73億円まで縮小し、20億円の営業赤字を出した。強力なブランドこそ持つものの事業自体を一から作り直さなければならないような状況だった。

 独立から約半年後に発売した先代のVAIO Zは「ソニー時代から開発が進んでいたから世に送り出せた」と林氏は振り返る。それ以降、新しい技術をつぎ込まなくてはならない最上位機種は「会社の体力がなく、独力で開発するのは厳しかった」(林氏)。

VAIOの通期業績の推移
VAIOの通期業績の推移
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 そのVAIOは今や、売上高257億円、営業利益26億円(いずれも20年5月期)まで成長した。事業規模はかつての水準とは比べものにならないが、営業利益率は電機メーカーとして高水準の10%だ。15年にVAIOの社外取締役に就任し、19年から社長を務めるJIP出身の山本氏は「経営基盤が整ったことで(VAIO社員の悲願だったZの刷新に)ようやく踏み切れた」と明かす。新型のZは、不振だったソニーのパソコン事業がVAIOという一企業として独り立ちできたことの証しなのだ。

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