速やかに段ボールへ詰め、ベストな状態で届ける
速やかに段ボールへ詰め、ベストな状態で届ける

 ある時、取引先のシェフが冷蔵庫の奥で3カ月程放置されていたタケイファームの大根を見つけて切ったら、水分が滴る程みずみずしかったそう。

 「その時は、シェフがとても驚いて『武井さんの野菜って何かやってんの?』と聞いてきたので『(魚と同じように)締めています』と答えました(笑)。たまたまあったスーパーの大根よりも新鮮だったそうです」

「やらないこと」を決めてから農家になった

 そもそも、武井さんはどうやって現在の農業の形にたどり着いたのでしょうか。

 「実家が農家だったんですが、両親は朝から晩までせわしなく働いていました。体力的にもキツイ作業が多い。それを横目で見ていたので『農業は継ぎたくないな』と思っていました」

 一度は営業職についた武井さんでしたが、多忙な毎日に疲れてしまい、いったん実家の農家を手伝うことに。そして、本格的に農業で独立をする際に、あることを決めたそうです。

 「農業を始めるにあたって、新規就農者向けの本を1冊買ったんです。そこにあったのは失敗の体験談ばかりでした。そこでその人たちがやったことを自分はやらないようにしよう、と思いました」

 まず決めたのは「地元で売らない」こと。地元にはいたるところにスーパーがありますが、どこでも安い値段の野菜が安定的に売られています。それに対抗すると、どうしても価格が下がったり、珍しい野菜は売れ残ってしまったりするそうです。そこで武井さんは、地元では一切売らず、レストランへ卸すことを決めました。

 武井さんが次に取り組んだのは「自分はこの野菜は作らない」という作物の取捨選択。

「まずやめたのはゴボウです。育つまでに時間がかかるのと、収穫の際に傷がつかないように周り50㎝くらいから掘らないといけないんですよ。労力に対してあまりにも単価があわない。枝豆やトマトも、労力が多いわりに傷むと商品にならないのでやめました。里芋もそうです。里芋はおいしいと評判だったので苦しい判断だったのですがやめました」

「栽培する野菜の基準は労働効率だけではありません。まず考えるのはそれが『おいしいかどうか』です。カラフル人参や色のついたじゃがいもなどは物珍しいので喜ぶレストランもありますが、品種として『おいしくない』という理由でやめました」

おいしさを重視して品種を選ぶ
おいしさを重視して品種を選ぶ

 タケイファームで栽培されている野菜は例えばじゃがいもなどもフランス系の品種など味にこだわったものばかり。それもレストランから用途をヒアリングしてから作付けするオーダーメード野菜が多く、それも圧倒的な差別化を生んでいます。

初めて野菜を売ったのはネットオークション

 とはいえ地元で売らない、農協には卸さない、というだけでは野菜は売れません。どうやって野菜を売ろうかと思った武井さんは、当時利用していたネットオークションで出品してみることに。

 「当時はライバルが少なかったので、少しの上乗せ金で『注目のオークション』のトップへ載せてもらうと、すぐに売れるようになりました。それよりも悩んだのは自分の野菜の持ち味をどう表現するか、ということ。北海道であれば『大地の恵みの』などと言ったりできるが、自分にはそれがない。だから『本物の野菜を食べてみませんか』とキャッチコピーをつけて売りました」

 野菜を購入した人から次々といい評価が集まり、それが自信へとつながっていったそうです。

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