日本には、その土地の気候風土に根差した個性豊かな食材がたくさんあり、その裏には、必ずそれに携わった作り手がいます。私は、農林水産省で働きつつ、休日はそのおいしさの源である産地へ出向き、作り手の声に耳を傾けた上で、その食材を料理し、伝えることをライフワークとしています。この連載では、まだまだ知られていないおいしい食材を一つひとつひもときながら、レシピと共にお伝えします。

 第3回のテーマは「チーズ」。

 私は大のチーズ好き。よく売り場に行くのですが、最近は国産の商品を見かけることが多くなりました。国内のチーズ工房は年々増加しており、現在なんと300カ所以上とのこと。

 国産チーズと聞くと、やはり北海道のような酪農が盛んな地域をイメージする方も多いと思いますが、私が住む東京でも搾りたての生乳で作ったフレッシュチーズを売っているお店があります。

渋谷で食べられる出来たてチーズ

 「SHIBUYA CHEESE STAND(渋谷チーズスタンド)」は「街に出来たてのチーズを」というコンセプトのもと、都内の牧場から運ばれた生乳を工房で加工し、24時間以内にフレッシュチーズとして提供しています。国内外のコンクールにおいて様々な賞も受けている実力派の人気店です。

出来たてのフレッシュチーズが味わえるSHIBUYA CHEESE STAND
出来たてのフレッシュチーズが味わえるSHIBUYA CHEESE STAND

 私が訪れた際も若者たちがチーズをおいしそうに食べながら、ランチタイムを楽しんでいました。チーズを食べ比べできるプレートや、ピザ、ホエイを使ったドリンクなど、どれも写真映えするかわいさです。

 今回、紹介する作り手は、藤川真至さん。CHEESE STANDの代表で、チーズを心から愛するチーズ職人です。

渋谷のチーズ職人、藤川真至さん
渋谷のチーズ職人、藤川真至さん

 「職人気質」という言葉がありますが、藤川さんは一般的な職人のイメージとは少し違い、軽やかでファンキーな雰囲気。彼は大学時代にチーズの研究をし、イタリアのナポリ郊外で食べた出来たてのモッツァレラのおいしさに衝撃を受け、飲食業界で下積みをしたのち、2012年6月に店舗をオープンしました。

 なぜ渋谷を選んだのか、と質問したところ、真っすぐな答えが返ってきました。

 「多くの人に味わってもらいたかったから、人が多い都会で始めたんです。フレッシュチーズを日常で食べるという新しい価値観を届けるためには、新しい文化を受け入れられる場所、渋谷が最高の場所だったんです」

 様々な人が行き交い、少し歩くと住宅や大使館も点在している渋谷は多様な価値観や文化が交ざり合う場所。そこはチーズ文化を発信するのに最適な場所でもある、というわけです。

 店舗や商品のデザインはいたってシンプルで、ある意味くせが全くありません。藤川さん自身の趣味やキャラクターはあえて反映させず、真っ白なチーズ以外の要素をそぎ落とすことを意識したそう。

人気商品モッツァレラチーズのパッケージ
人気商品モッツァレラチーズのパッケージ
続きを読む 2/3 原料のミルクも東京都内の牧場から

この記事はシリーズ「作り手とレシピで知る「日本の食」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。