「買ってください」とは言わない

 売り先を決めてから、ものを作るのが彼のポリシーです。販路の8割がレストランやバーなどの飲食店。貫いている営業スタイルは「買ってください」とは決して言わないこと。その代わりに様々なワークショップを行っています。

 「レモンサワー伝道師」もその1つ。飲食店への研修や一般の方向けのオンラインイベントなどでレモンのおいしさを語ることで理解者を増やしていきました。

レモンサワーを作る菅さん
レモンサワーを作る菅さん

 「意外とみんなレモンのことを知らない。四季の中で色を変え、グリーンレモンからイエローレモンへ変化して、ようやく冬に熟すということも、国産のレモンは皮まで食べられるということも、伝えて初めて分かってもらえる。納得してくれれば、そんなレモンなら、と買ってもらえる」

 新型コロナウイルスの影響は、菅さんの農園にも押し寄せました。売り先のほとんどが飲食店だったことから、2020年の春から徐々に発注が減るなどの変化があったそうです。

 「2月くらいから雲行きが怪しくなってきたので、3月には対策を打った」

 その具体的な対策とは、日ごろレモンサワーの売り上げが多い店にテイクアウトやECサイト向けの「家飲みレモンサワー」の提案を行ったこと。レシピも伝授し、その際には送ったレモンをいかに日持ちさせるかという保存方法なども細かく伝えたそうです。これが功を奏して、発注量はコロナ前よりもアップ。まさにコロナ禍のピンチをレモンサワーが救ったわけです。また、ジェラートやレモネードなど業務用での需要が増え、それも売り上げに貢献しました。

 「コロナ禍を乗り切った飲食店の人から、お礼を言われることも多かった。これまでいろんなビジネスをやったけど、こんなに自分自身の承認欲求が満たされた仕事はこれまでになかったんよ。昔は誰の口に入るのか分からないものを扱っていた。お客さんから『菅さんのレモン』と呼んでもらった時、雷が落ちたような喜びがあったなぁ」

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