福島を思って始めたビール造り

 ビール造りを始めたのは、東日本大震災の後、自分が福島のために何ができるかを考えたことがきっかけだそう。

 「被害の大きかった南相馬市の副市長などから現状を聞く中で、農家である自分にしかできないことをしようと思い、南相馬でも米作りを始めたんです。おいしいクラフトビールに出会えたのもその頃」

カトウファームが育てるホップ
カトウファームが育てるホップ

 最初は、原材料を作り、委託して醸造してもらう形を取っていましたが、次第に自分たちで醸造したくなった加藤さんは、すぐ行動に移します。

 以前知り合ったビール好きな方から「自分が一番おいしいと思うビール屋さん」として東京都内で人気の「ライオットビール」を教えてもらい、Twitterのダイレクトメッセージでオーナーに話を聞きたいと連絡を取ると、快く引き受けてくれたため、夫婦で醸造を習うことになりました。

 「とんでもないアイデアを出すのはいつも私。夫は心配することが多いんですが、最終的にのめり込むのは夫のほうなんです」と加藤さん。2020年にオープンした醸造所の責任者は夫の晃司さんが担っています。

3倍のホップで華やかなビール

 加藤さんの造るビールですが、まずはその見た目からノックアウトされました。ポップでカラフルなロゴとイラスト。

Yellow Beer Works のビール缶
Yellow Beer Works のビール缶

 そしてビール自体の感想は「飲みやすい!」ということ。

 「自分が飲んでおいしいビールをとことん追求しました。私はホップがたっぷり入った華やかなビールが好きなので通常の3倍程度入れています。缶のデザインは、友人の紹介で出会ったアメリカ在住のデザイナーに頼み、好きなパンクロックのイメージで、ファンキーに仕上げました」

 売れ筋を聞いてみたところ、爽やかでにごりのあるヘイジーやフルーティーなものが人気とのこと。アルコール度数は4~5%が主流ですが、黒ビールは高めの8%とバラエティー豊かです。

 カトウファームで作っているとうもろこしや、米が原料になることもあります。福島の桃農家さんとのコラボ商品など、福島県産も前面に打ち出しています。

 「農家さんに、できあがったビールを渡すと『うちで育てたものがこんなにおいしいビールになった!』とすごく喜ばれます」

福島産の桃をぜいたくに使った「Squeezy Peach」
福島産の桃をぜいたくに使った「Squeezy Peach」

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