日本には、その土地の気候風土に根差した個性豊かな食材がたくさんあり、その裏には、必ずそれに携わった作り手がいます。私は、農林水産省で働きつつ、休日はそのおいしさの源である産地へ出向き、作り手の声に耳を傾けた上で、その食材を料理し、伝えることをライフワークとしています。この連載では、まだまだ知られていないおいしい食材を一つひとつひもときながら、レシピと共にお伝えします。

今回のテーマは「オリーブオイル」。
今やコンビニで買えるほど身近になったオリーブオイル。スーパーに行くと棚には様々な種類が並んでおり、迷ってしまうほどです。
私も普段の料理にオリーブオイルは欠かせませんが、現在、日本で販売されているオリーブオイルの多くは、イタリアやスペインなどから輸入されたもの。日本には年間約6万トン(2021年)のオリーブオイルが輸入されているというから驚きです。
一方、最近注目されているのが、国産のオリーブオイルです。国産のオリーブオイルの多くは小規模生産。良質なオリーブオイルを作るためには収穫したその日のうちに搾るのがよいとされています。大量生産品と比べると栽培から収穫、搾油までの時間が短くて済むので、高品質なオリーブオイルが多いのが特徴です。現在、国産のオリーブオイルは海外からも高く評価され、国際的なコンクールでも数多くの賞に輝いています。
希少な国産オリーブオイルの生産量のおよそ87%(19年)を占めるのは香川県。今回紹介する農業生産法人オキオリーブも香川県にあります。
「オキオリーブ(商品名)」は私が数年前から年に1度購入しているプレミアムなオリーブオイルです。料理の仕上げに少し垂らすだけで、芳醇(ほうじゅん)な香りや爽やかな辛味がプラスされます。生産者の澳敬夫さんから詳しくお話を伺いたいと農園まで足を運びました。
オリーブに魅せられた証券マン
香川のオリーブオイルと聞くと「小豆島」を連想するかもしれません。でも、澳さんのオリーブ畑があるのは高松市内。高松空港へ到着し、レンタカーを走らせながら、ぐるぐると山道を登っていくと、20分ほどで一面に広がるオリーブ畑と出合えます。ジャスミンのような爽やかな香りと共に、澳さんが出迎えてくれました。

「香川県は温暖で雨が降りにくい。オリーブの故郷である地中海の気候風土によく似ているんですよ。この地で、どうしてもオリーブオイルをつくりたかった」
澳さんがオリーブ畑を開いたのは15年。野村証券で働くバリバリの証券マンだった澳さんは、香川県に配属されたことをきっかけに、オリーブに興味を持ち、ついに会社を辞めてオリーブ農家へ転身しました。
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