この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約6000人の受講生のデータと学習工学に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。コメント欄でビジネス英語について何でもご質問ください。

 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

メーカー勤務 Tさん(38歳)
 会社での昇格の条件としてTOEICのスコアがあるので、ある程度の得点は持っています。しかし、英語で実際に話そうとすると時間がかかり、なかなか即座に文章を作ることができません。そこでフレーズ暗記をしているのですが、特に効果を感じられません。フレーズ暗記に意味はあるのでしょうか。

[回答]
 Tさん、フレーズ暗記について疑問を感じているということですね。確かにフレーズ暗記は教材の選定ややり方を間違うと効果的でないことがあります。フレーズ暗記のコツについて今回はご説明したいと思います。

 まずは、教材の選定方法です。フレーズ暗記の教材としてよく使われているのが、『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』(森沢洋介、ベレ出版)です。3カ月単位の英語コーチングスクールでは、ほとんどの人にこれを使っているケースもあるほど著名な教材です。もちろんTORAIZでも、使うことはあります。しかし、最も大事なことは自分の英語学習のゴールに合わせた教材を選ぶことです。

 Tさんの業務がどのようなものかは分からないのですが、例えば、研究開発をしていて学会発表などもあるようであれば、『研究発表ですぐに使える理系の英語プレゼンテーション』(島村 東世子、日刊工業新聞社)などがフレーズ暗記の教材としてよいと思います。また、生産管理であれば、『世界中で通じる! 製造現場の英語』(デイビッド・A・セイン、アスク出版)などが候補に挙がってきます。

 最近は、専門分野の英語の教材が急速に手に入りやすくなっています。それは、Kindle版など電子書籍の普及で在庫リスクがなくなったからです。ぜひ、読者の皆さんも一度、自分の専門分野について調べてみてください。Kindle版であればかなりニッチな専門分野についてもあるはずです。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 多くの人はこうした専門的な難しい教材よりも、簡単な教材から覚えたほうがいいのではと思い、まず『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』から学習すべきだと考えてしまいます。しかし、TORAIZではそうは考えません。Tさんのように既に TOEICのスコアをある程度持っている人の場合、文法的にはどの教材からでも問題ないと思います。

 それよりも大事なことは、より自分のゴールに合っていることです。もしかするとTさんがフレーズ暗記の効果を感じられないのは、ゴールと無関係な教材を使っているからかもしれません。

 そもそも、フレーズ暗記は文法や単語の学習をするためのものではありません。基本的な文法や単語は知っていることを前提に、構文に時間をかけず、即座に発話するための学習です。ですから、自分が使わないフレーズを覚えても全く意味がありません。

 文法や単語の面でも実際に自分が使うフレーズでなければ、参考にならないと思います。こうした学習をするのであれば、自分が使うフレーズを直接覚えてしまうべきです。

 また、フレーズ暗記は英語のネイティブスピーカーにとってもナチュラルな英語をマスターする優れた方法です。言語には、どうしても文法では割り切れない部分があるからです。

 日本語でも、「私がやります」「私はやります」のニュアンスの違いを文法で説明するのは簡単ではないと思います。例えば、何かよくないことをした人が、「私はやりました」とは言いません。このように言語には、文法では説明が難しいニュアンスがあり、それは英語でも変わりません。

 ですから、あるシチュエーションを前提としてフレーズを丸ごと覚えることが、ナチュラルな英語をマスターするための重要な方法とされているのです。

 以上のようなことから、フレーズ暗記については、できるだけダイレクトに自分が使うシチュエーションに合った教材を選択してください。

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