高い英語力を要求されるのは「B」です。
目標が具体的なほど英語学習の効果は大きくなる
実は、AとBで要求される英語力についてはかなりの差があります。TORAIZがスピーキング力の測定のために使っている英ピアソンのVERSANTテストのスコアで言えば、Aは47点、Bは58点がゴールになります。その差は11点もあり、英語力として非常に大きな差があります。効率的に学習したとしても、学習時間で言えば数百時間の差はあるでしょう。
それほどの差があるのには2つの理由があります。それは、「テーマの範囲」と「要求される流ちょうさ」です。
まず、「テーマの範囲」ですがAの「自分が担当する専門分野」とBの「新規事業」で比較すると、「自分が担当する専門分野」の方がはるかに容易です。自分の専門分野ですから、使っている単語は一般的な単語帳には載ってはいない専門用語や略語であっても知っているものである可能性が高いです。場合によっては、日本語で話すときも外来語として使っているかもしれません。またフレーズについても大体決まった言い回しでよいはずです。この点は、プレゼンテーションだけでなく質問への回答についても同じです。
それに対して「新規事業」は、新しい消費動向や人工知能(A I)といった新たな科学的な知見など、知らない単語が出てくる可能性が高いでしょう。このように社会人が使う英語の場合、単語やフレーズの面でも専門的であればあるほど容易で、範囲が広くなるほど難しくなるのです。
「要求される流ちょうさ」についても「プレゼンテーションと一問一答」と「ブレーンストーミング」では全く違います。
プレゼンテーションであれば、基本的に話す速度は自分でコントロールできますし、多数の聴衆の前ですからゆっくり話すのが普通でしょう。また、一問一答は、質問を聞いてから回答するので、ある程度考える時間があります。必要に応じて、質問を自分の理解という形で単純化した上で回答するなどのコミュニケーション上のストラテジー(第二言語習得理論では「方略」と呼びます)を使うこともできます。
一方、ブレーンストーミングは、話している人の意見に間髪入れず反応することが求められます。さらに、英語のネイティブ同士の会話に割って入る必要もあるでしょう。コミュニケーションを自分でコントロールできる余地は少なく、コミュニケーションストラテジーを使うことも難しいでしょう。一方的に話すプレゼンテーションとは必要とされる流ちょうさが全く違うのです。
これだけ違いがあれば、おのずと教材選定や学習方法などの学習計画は大きく異なってきます。覚えるべき単語やフレーズの量、高いリスニング能力を身に付けるためのディクテーションまでするかどうかなど、すべてが違います。ですから5W1Hまで英語を使うシチュエーションを詳細化することで初めて、英語の学習計画を立てることが可能になると言えます。
また5W1Hまで英語を使うシチュエーションを詳細化することは、学習の効果を上げます。第二言語習得学会の会員でもあるTORAIZ語学研究所は、先日行われた第21回日本第二言語習得学会国際年次大会(J-SLA2021)にて以下のような研究結果を発表しました。
この研究では、TORAIZで1年間の英語コーチング・プログラムを修了した受講生を対象として、英語学習をする際に具体的なゴール設定をすることの重要性を調査するため、「どこで」「だれと」「何を」「どうやって」の要素のうち、いくつの要素が含まれているかを分析しました。1つの要素を含むものはグループ1、2つの要素を含むものはグループ2、3つの要素を含むものはグループ3、4つの要素を含むものはグループ4に分類しました。また、それぞれの受講生のスピーキング力の伸びを測るために、VERSANTテストを使ってプログラム開始前の点数とプログラム受講期間中の最高点の差を測定しました。
その結果、次の図のように、より具体的なゴールを設定した英語学習者は、学習によるスピーキング力向上の効果がより大きいことが確認されたのです。

発表内容プレスリリース:https://www.dreamnews.jp/press/0000246587/
Mさん。このように5W1Hレベルまで英語学習のゴールを明確にしてください。それが、学習計画を立てる前提になり、学習の効率を高めることにも役立つのです。
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