1点目のコンテクストについてですが、日本は会社も社会も濃密にコンテクストを共有していると思います。例えば会社であれば、事業の基本的な考え方や承認プロセスなどを共有して、言わずもがなで相互理解して会話している面があります。ところが米国では会社間はもちろん、同じ会社の中にもいろいろな人がいて、日本のようにコンテクストを共有していない部分が多いと思います。米国ではやはり言わずもがなとされている暗黙知的なものをあえて言わないといけないということでしょうか。
中村氏:レベルセッティングをきちんと合わせることが必要です。合わせないとずれたまま話が進んでしまいますから。例えば、日本人は話をしていて合意していないなと思っても、言わないことが多いですよね。米国では「これ、あなたは合意していないですよね」と尋ねたり、「えっ、俺これ理解していないけど、みんな理解している?」と聞いたりすることがとても大事です。
3つ目もその通りだと思います。日本企業が米国に行くと、まず会社の沿革から会議を始めてしまい、交渉相手に最初の5分で「つまらない。帰れ」と思われることが多いと聞きます。最初の5分の勝負で中村さんが工夫されている点などがあれば教えてください
以前、三木さんから「(ソフトバンクの)孫さんが企業の経営者に会うとき、自分だったらその会社の課題をどう解決するかを考えてから会う」と教えてもらいました。これは、非常に大事なライフレッスンで、ある人に会ったときに「この人だったらこういうことを考えていてほしいな」ということを最初にはっきりと言うことですね。
例えば、投資候補先の方にお会いしたときに「僕だったら日本のパートナーとしてこの人やこういう会社にお願いに行くと思うのだけど、なんで話をしに行かないの?」と言うと空気が一気に変わることもあります。

そういったマインドセットや仕事のやり方も含まれるかもしれませんが、中村さんが考える「世界で活躍できる人材像」を教えてください。
中村氏:やはり、相手が言うことを相手の立場に立って考えられるのがとても大事ですよね。シンパシーをきちんと持てるということです。「この人だったらこういうふうに思うだろうな」「こういうことを言ってほしいんだろうな」といったことですね。
あとは、自分が言いたいことを一生懸命言うのではなくて、「相手は自分にこういうことを期待しているだろうな」と分かることがリーダーとしては大事な気がします。このあたりはトレーニングだと思います。
これまで何か特別なトレーニングをされましたか。
中村氏:カウフマン・フェローズ・プログラムでは、ベンチャーキャピタルのメカニズム、投資契約の仕組みなどを学ぶのですが、その教育がものすごく大きな要素です。例えばボードメンバーとして自分が参加したときにどういう振る舞いをするのか、どうやってファシリテートするのか、ということをしっかり習います。「自分はこう思ってやっているけれど、ベンチャーの経営者は異なることを考えている」などと言われたりします。
面白い講習がありました。自分たちの投資先のボードメンバーに入っている講師の講習の際に、「自分はこういうことに注意して、こういうことやっている」という話をしました。一方、カウフマンの人たちがこっそり投資先に「実際はどう思っていましたか」とインタビューしていました。すると両者は全く違うことを考えていました。
面白いですね。
中村氏:そういったことを改善するにはどうしたらいいのかというところで、自己分析をしたり、トレーニングを受けたりします。例えば、私が受けたのは、会議のファシリテーションスキルの講習です。トレーニングで手順を学ぶとできるようになり、80点ぐらいは取れるようになります。ほかにも、プレゼンテーションやスピーチ、コミュニケーションなど、ある程度のスキルセットをロールプレーで練習できるので。自分なりのやり方で80点に持っていくことができます。
こうしたトレーニングは日本社会ではやらないことが多いですね。私は子供が4人います。長女が高校3年生、次女が高校1年生ですが、小学生の頃からプレゼンテーションや会議のファシリテーションのようなことをかなりやっていました。それに対してフィードバックをする練習があるのですが、これは練習しないとできません。Sozo Venturesでも、役員として派遣する場合はそうしたトレーニングを受けてもらいます。
リーダーシップは生まれつきのものなのか、それとも研修や教育で身に付くものかというテーマがありますが、身に付くということですね。
(後編につづく)
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