この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約6000人の受講生のデータと学習工学に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。コメント欄でビジネス英語について何でもご質問ください。
それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。
外資系金融機関勤務 Yさん(25歳)
外資系金融機関に勤務しているので、英語を使って仕事をしています。私自身、英語を集中して学習して短期留学をしたこともあり、英語での業務には問題ありません。しかし、一緒に仕事している帰国子女などの同僚と比較すると自分の英語の発音が「カタカナ英語」のようではないかと気になってきました。発音をより英語のネイティブスピーカーに近づけたいのですがよい学習方法はないでしょうか。
[回答]
Yさん、ある意味、非常にぜいたくな質問です。英語で仕事をすることに「問題ない」と言えるができるレベルになるのは相当な努力が必要です。今までの努力のたまものということでしょう。
発音をより英語のネイティブスピーカーに近づけたいというご質問ですが、大人になってから英語の発音を直すことは容易なことではありません。それについては以前の記事「孫正義氏の英語スピーチに学ぶ、発音矯正よりも重要なこと」でも詳しく説明していますので、ご一読ください。
上記のような理由からTORAIZでは、英語の発音は後回しにして、まずは英語を使って仕事ができるようになることを目指しています。発音まで矯正していては、業務をこなせるようになるまで1年ではとても足りません。これでは、挫折する可能性が高過ぎます。一方で、英語のスピーキングテスト「VERSANT」で47点程度の英語力があり、学習目標としてVERSANTで58点を目指すという人には発音も指導しています。
TORAIZでは英語の発音について「日本語と英語の違いや発音の理論を知った上で、日本人である私たちに合った発音のトレーニングをして、カタカナ英語から脱却する」という考えを持っています。この考え方であれば、短期間で効率よく発音を矯正し、格段にスムーズなコミュニケーションを実現できますし、リスニング力も向上します。「説得力がある英語」「パワーのある英語」を話せるようになり、「完全なネイティブの発音ではないけれど、かっこいい英語を話す人」になることは可能なのです。
発音トレーニングで重要なポイントは3つです。1つ目がリンキング、2つ目がリズムと抑揚、3つ目が音声変化です。これらのポイントをしっかり押さえつつ、どんどん実践を重ねていきましょう。

ポイント1:リンキング
「リエゾン」という言葉を聞いたことがあると思います。「リエゾン(liaison)」は、フランス語において、発音されない語尾の子音が次に続く語の語頭母音と結合して発音される現象を言います。
日本語では「連音・連結」などと訳され、英語では「リンキング(linking)」と呼ばれます。日本語はほぼすべての音が子音+母音のコンビネーションで構成されており、一音一音が区切れている言語です。一方フランス語や英語は音をつなげて話す言語です。
そもそも言語の特性の違いがあるのです。これをしっかり認識して、日本語の話し方から脱却する必要があります。
リンキングをマスターするにはシャドーイングや音読が効果的です。発音でリピーティング学習をする場合がありますが、リピーティングは一度頭に保持してから発話するので、頭の中のカタカナ英語が出てきやすくなってしまうことがあります。
またここで言う音読は一般的なイメージの音読ではなく、モデル音声を「まねる」前提での音読です。シャドーイングをする場合は、モデル音声をまねしながら、音のつながりをテキストでしっかり確認しましょう。音と音のつながりをテキストで見つけたら印をつけておくと復習しやすくなります。
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