大切なのは多読よりシャドーイング

 実験では、まず日本人の高校3年生計90人を事前の英語速読テストの成績によって、30人ずつの等質なAからCまでの3群に分割します。次に、それぞれの群に下記のような英語訓練を実施します。

A群:リスニングの授業を30回+テープ(句・節単位毎のポーズを人工的に入れたもの)の朗読をペースメーカーにした黙読訓練 (合計29回)

B群:リスニングの授業を30回+テープ(句・節単位毎のポーズはなし)の朗読をペースメーカーにした黙読訓練 (合計29回)

C群:書き言葉の速読のみ (合計59回)

 訓練期間終了後に速読テストを実施したところ、下記のような結果が得られました。

A群 B群 C群
読速度(WPM) 145.1 128.8 114.3
読解速度  134.4 117.0 99.8
※同実験でいう「読速度」とは、1分間に読める単語数=WPM(Words Per Minute)を指します。また、読解速度は、読速度(WPM)に理解度テストの正答率を掛け合わせた読解力指標の一つです

 上記データで分かる通り、A群が読速度(WPM)・読解速度の双方でもっとも高い数値を示し、次いでB群、C群となりました。つまり、英文の読解訓練のみ学習するよりも、リスニング訓練を十分に積んだ上で、音声提示しつつ読解訓練を導入する方法を採用したほうが、より読速度や読解力の育成に効果があるということがいえます。

 先ほどの「意味理解」のプロセスでいうと、英文の読解、つまり意味を理解するには「音」を経由することが必要という「音韻ルート」説が有力だと示されたともいえるのではないでしょうか。同時に、リスニングとリーディングは人間の脳における独立した別個の処理ではなく、相互に補完性があるとも考えられます。

 これらの結果を加味して、効率的にリスニングのスキルを向上、特に「意味理解」の能力を向上するためには、黙読のみの多読はおすすめしません。Aさんのような映画や海外ニュースの音声が知覚できるリスニング力を持っている人が多読をする際は、英語のネイティブ話者の音声を読速度のペースメーカーとして活用し、できるだけ追いかけて一緒に音読することがより効果的です。

 すなわち、「シャドーイング学習」です。「意味理解」の能力を向上するために、私は黙読のみの多読だけでなく、シャドーイングにも時間を費やすべきだと考えます。

 また、シャドーイングの中でも、「意味理解」までを目的としたコンテンツシャドーイングを行うことが重要です。ちなみにシャドーイングには、音声をまねることをゴールとするプロソディシャドーイングと意味理解まで求めるコンテンツシャドーイングの2つがあります。詳しくは「聞いた英語をまねるシャドーイング、続けているが会議では聞き取れない」を参照ください。

 Aさんがリスニング力を向上させるためには、多読よりもシャドーイング、その中でもコンテンツシャドーイングが重要です。頑張ってください。応援しています。

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