この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約6000人の受講生のデータと学習工学に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。コメント欄でビジネス英語についてなんでもご質問ください。

 今回はTORAIZを受講しているオランダ1部リーグ・PECズヴォレ所属のサッカー選手、中山雄太氏からの質問を取り上げたいと思います。

[今回の質問]

サッカー選手 中山雄太さん(24歳)
 海外で選手としてやっていく上でさらにネイティブな英語力を付けていくには、どのようなことに着手すべきでしょうか。また、ネイティブと話す機会を増やすにはどのようなことを心がけるべきでしょうか。

東京五輪でも活躍した中山選手。ワールドカップ・アジア最終予選でも代表に選ばれている(写真:青木紘二/アフロスポーツ)
東京五輪でも活躍した中山選手。ワールドカップ・アジア最終予選でも代表に選ばれている(写真:青木紘二/アフロスポーツ)

[回答]
 中山さん、オランダでのプレーに加えて、日本代表としての活躍をいつも応援しています。多忙かつハードな環境で、TORAIZのプログラムを着実に進める様子を見て、優れたアスリートは優れた学習者であると強く感じるところです。

 中山さんは、受講開始から8カ月で英ピアソンの英語スピーキングテスト、VERSANTのスコアで47点を取っています。8カ月で12点のアップは大変立派な成果だと思います。47点はCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠、詳しくは「会社の英語力の指標にCEFRが加わった、TOEICと何が違う?」を参照)で言えばちょうどBレベル「自立した言語使用者」に到達したところで、その中でもB1レベルということなります。B1は次のような定義です。

CEFR B1

 仕事、学校、レジャーなどでよく遭遇する身近な事柄について、明確で標準的なインプットの要点を理解することができる。その言語が話されている地域を旅行中に起こりうるほとんどの状況に対処できる。身近な話題や個人的に興味のある話題について、筋の通った簡単な文章を作成することができる。経験や出来事、夢、希望、野望を説明し、意見や計画の理由や説明を簡潔に述べることができる。

 このレベルに達すれば、プロのサッカー選手として、戦術面での監督とのミーティングやピッチ上での選手間のやり取りなどサッカーに関した範囲については、自立した言語使用者として通訳などの助けなしにやっていけるレベルになっているはずです。

 しかし、中山さんとしてはさらに実力を高めてネイティブな英語力を目指したいのですよね。するとCEFRではB2レベル、VERSANTスコアであれば58点を目指すということになります。B2は次のような定義です。

CEFR B2

 専門分野の技術的な議論を含む、具体的なテーマや抽象的なテーマの複雑なテキストの趣旨を理解できる。ネイティブスピーカーと日常的に会話ができる程度の流ちょうさと自発性をもって、お互いに無理なく会話ができる。幅広いテーマについて、明確で詳細な文章を作成し、時事問題について、さまざまな選択肢の長所と短所を含めた見解を説明することができる。

 中山さんはそれほどかかりませんでしたが、30点代の人がB1レベルの47点まで到達するには基本的には1年、1000時間かかります。しかし、47点の人が58点まで行くには個人差はありますが、それほど期間はかからないと思います。最短で3カ月で到達できます。それは、学習の基本パターンができていることに加えて、B1レベルの自立した言語使用者として普段の生活やビジネスでも実際に英語を使う場面が多くあるからです。

中山選手はVERSANTで47点を取得、CEFRではB1レベルの英語力を有する
中山選手はVERSANTで47点を取得、CEFRではB1レベルの英語力を有する

 また、30点代の人がB1レベルに至るまでは「聞いて話せるようになる」「実践で使えるようになる」ことに集中するため発音や会話の流ちょうさには取り組みません。B1に至ると、言語使用者としての土台がすでにあるため、より自然なネイティブに近い発音やイントネーションを目指して学習に取り組むことができます。発音矯正や流ちょうさを上げる訓練も効果的に実施することでB2を目指すことができます。

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