この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約6000人の受講生のデータと学習工学に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。コメント欄でビジネス英語についてなんでもご質問ください。

 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

大学生 Kさん(21歳)
 小学校から中学、高校、大学まで学校での学習にとどまらず、子供の頃に塾や英会話教室でも英語を勉強してきました。合計すると英語学習に相当な時間を使っていると思います。しかし、まだまだ英語を話すことには自信がなく、抵抗感があります。なぜ、多くの日本人は何年も勉強をしているのに英語を話すことができないのでしょうか。どうしたら、抵抗感なく英語を話せるようになるのでしょうか。

[回答]
 Kさん、非常に根本的な質問ですね。この質問に答えるためには、英語の学習方法そのものについて議論するのではなく、より根本的なあらゆる分野の学習についての考え方を議論することが必要となってきます。

 なぜ日本の英語教育には限界があるのでしょうか。そこには2つの理由があると思います。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 まず1つ目の理由は、学校教育で割り振られた英語の学習時間が足りないことです。基本的に、日本人の多くは中高や受験勉強、英会話スクールなどで1000時間以上は英語を学習していますが、それに加えて1000時間の英語学習が必要です。他にも学ぶ科目がたくさんありますからこれ以上の時間の割り振りは難しいのも事実だと思います。しかし、足りないのです。

 日本人にとって英語は第二言語です。そのような第二言語を科学的に習得する第二言語習得理論がかなり研究されてきていますが、やはり画期的な方法はないのです。

 今日でも、米国の国務省の外交官やCIAなどの情報機関の関係者は日本語の習得に2200時間以上かけているのです。もし、画期的な科学的学習方法が発見されているのであれば、彼らが日本語習得にこれほど時間をかけることはなくなっているはずです。第二言語習得に必要な学習時間については、以前掲載した「週1回の英会話教室通い、英語が話せるようになるまで何年かかる?」で詳しく説明しているので、そちらもご一読ください。

 もう1つの理由は、インプット中心の学習です。これは学校教育や塾だけでなく、英会話スクールや英語コーチングスクールの一部にも当てはまると思います。

 日本では、まだまだ浸透していませんが、英語に限らず「学ぶこと」について、すでに科学的に効率的な学習デザインの手法が明らかになっています。このメソッドはインストラクショナルデザインと呼ばれるものです。

 インストラクショナルデザインの効果は、「ブルームの2シグマ問題」として知られています。同問題では、学習者に個別最適化したインストラクショナルデザインに基づくプログラムは一般的な一斉授業プログラムと比べて、学習者の成績が2シグマ分、良くなるということが知られています。つまり偏差値50の人はインストラクショナルデザインによって偏差値70になるということなのです。これについては以前の記事「バイデン演説の94.6%は中学英語でできている」で取り上げています。米国では公教育でも取り入れられているメソッドで、これによって優れた人材を輩出する仕組みができています。

 インストラクショナルデザインにはさまざまな手法やモデルが開発されています。米国における教育分野の研究者として最も著名な1人であるM・デイビッド・メリルがインストラクショナルデザインに共通する普遍的な要素を「First Principles of Instruction(指導の第一原理)」としてまとめています。

続きを読む 2/2 インストラクショナルデザインの5つの要素とは?

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