電話の音声の周波数帯は……

 次に問題になるのは、英語の発音の周波数帯が皆さんの多くが聞き取れる1万Hzを超えているのかということです。

 トマティス理論に基づく論文や書籍では、英語の周波数帯が1万2000Hz前後まで分布しているとする論文もあります。このために日本人は聞き取りにくいという論拠となっているようです。確かに、基本的に子音の周波数帯は高いことが多いので、英語の発音には日本語より子音が多いため、結果として高周波帯が占める割合が高いということはありそうです。

 私がここで違う角度からですが指摘したいのが、電話の音声の周波数帯です(音声の周波数であって、電波の周波数ではありません)。

 実は、アナログの固定電話や3Gまでの携帯電話では、音声については300〜3400Hz、2014年以降に普及したVoLTE方式の携帯電話でも、50〜7000Hzのみを再現しています。これは、全世界で共通の技術規格ですから、英語であっても高周波帯の音声は切り捨てられています。それでも英語は英語として認識され、会話に困るという話は聞いたことがありません。

 これは当然と言えば当然で、これらの技術規格の周波数帯は、人間の声の主成分はおおむね200〜4000Hzの周波数帯にあり、音声を構成する全ての周波数帯をカバーしていなくても音として十分に聞き分けることが可能ということで仕様化されています。実際に、この周波数帯で世界中の言語が使われているのです。たとえ、高周波帯域が多い英語であっても3400Hzぐらいまでの周波数帯で、聞き分けるために必要な音の成分はカバーしているのです。

 このようなことから考えると、「英語が聞き取れない」とは高周波帯が物理的に聞こえないことではないはずです。日本人が物理的に聞き取れない英語の音声の高周波数帯は、存在するかもしれませんが、音を識別するための成分としてあまり重要でないからです。

 1万Hzぐらいまでは多くの人が聞こえることは明らかであり、VoLTE方式の携帯電話で7000Hzまでの周波数帯であっても英語を使って不自由なく会話できています。また、3400Hzでよいのであれば加齢による高周波帯域の聴力の衰えがあったとしても英語が聞き取れないということもなさそうです(さすがに、日本語が聞き取れないレベルになると難しくはなるでしょうが)。

 こうしたことから私は、「高周波数帯域を聞けるように耳の訓練をする」といった周波数に比重を置いた特殊な訓練をする必要はないと考えます。ある特定の音だけにこだわるのではなく、むしろ単語のシラブルやイントネーションなども含めて学習するために、きちんとシャドーイングをしていただければ十分だと思います。(シャドーイングの方法については聞いた英語をまねるシャドーイング、続けているが会議では聞き取れないをご参照ください)。

 Aさん、英語学習に年齢は関係ありません。何歳であっても自信を持って学習してください。

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