この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の5000人を超える受講生のデータと学習工学に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしています。コメント欄でビジネス英語についてなんでもご質問ください。

 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

医師 Aさん(48歳)
 英語のリスニングについては、耳の訓練が重要だと聞きます。また「英語の音の周波数帯は日本語の音の周波数帯より高いため、日本人は英語を聞き取れない」という説も読んだことがあります。聞こえない周波数が聞こえるようになるために耳を訓練するには相当な時間がかかるのではないでしょうか。

 また、若ければ耳の訓練で聞き取れるようになるかもしれませんが、私のような年齢で「英語耳」の訓練をすることは難しいのではないかと思います。頑張れば、私の年齢でも英語をリスニングできるようになるのでしょうか。

[回答]
 さすがに医師の方の質問ですね。リスニングについて耳の能力から考えるという視点は検討する必要があると思います。

 Aさんの言われている「英語の音の周波数帯が日本語の音の周波数帯より高いため、高周波数帯域を聞けるように耳の訓練をする」という訓練法ですが、おそらくトマティス理論について言われているのだと思います。

 トマティス理論とは、フランスの耳鼻咽喉科医アルフレッド・トマティス(1920~2001年)が提唱した聴覚・心理・発声の改善のための理論です。トマティスは、それを基に聴覚改善トレーニング手法を開発しました。日本にも、トマティスが開発した特殊な機器とトレーニング手法を使って英語の発音の周波数帯域を聞くことができる「英語耳」をつくることが重要であるとする英会話スクールも存在しています。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 では、そもそも英語の音声には、日本人が物理的に聞き取れない周波数帯が本当にあるのでしょうか。

 まず、一般的に人間の聞き取れる周波数帯域は、20Hzから2万Hzとされています。ただ、年齢によって、ある程度の差があるとされており、年齢が上がるにつれて高い周波数帯が聞こえなくなる傾向があります。Aさんが懸念されている点もこのようなことをご存じだからだと思います。

 そこで、日本人というよりAさんの聞き取れる周波数帯を検証しましょう。これを議論のスタートとしたいと思います。パナソニックのサイトで簡易的に確認できますので、読者の皆さんも試してみてください。

 いかがでしたでしょうか。Aさんも1万Hzぐらいまでは聞き取ることができるのではないでしょうか。

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