この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約6000人の受講生のデータと学習工学に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしています。コメント欄でビジネス英語についてなんでもご質問ください。

 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

金融機関勤務 Tさん(26歳)
TOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC)のリーディングセクションでいつも時間不足になり全問解くことができません。全問解答して高得点を狙うためには、リーディングセクションで1分間に150ワードを読む速さ、つまり150wpm (words per minute)が必要と聞きました。しかし、かなりの量の過去問や練習問題を解いてもその速さには到達しません。どのようにしたら読む速度が向上するのでしょうか。

[回答]
 Tさん、それなりの量の過去問や練習問題を解いているのに読む速度が向上しないということは、読み方が悪いのだと思います。

 日本の中学、高校で勉強する従来型の翻訳あるいは読解方法は、紙のテキストベースで翻訳することを前提にしたものです。100年前であればこの方法でよかったと思います。当時は、限定された時間内で高速で読解するよりも、厳選された英語の原文をじっくりと時間をかけて、ナチュラルで読みやすい日本語に翻訳し、社内文書や出版物としてアウトプットすることが重要だったからです。

 しかし、このような従来型の翻訳あるいは読解方法では、TOEICで高得点を取ることが難しいだけでなく、インターネットを通じてリアルタイムかつ大量に供給される英語の情報を処理するには速度が足りないのです。

 また、紙のテキストベースでの処理を前提にしているので、リーディングには対応できますが、リスニングでは機能しません。これが、日本人がネイティブスピーカーの話す英語を聞き取れない理由の1つです。より正確に言えば、ところどころ単語を聞き取れたとしても、話の全体としては意味を把握できないのです。

 実際の例で見てみましょう。2013年1月21日に米ワシントンで行われたオバマ大統領の第2期の就任演説の一節です。また、これを従来型の方法で翻訳すると次のようになるでしょう。

英語原文
① We must act,
② knowing
③ that today’s victories will be only partial, and
④ that it will be up to those who stand here in four years, and forty years, and four hundred years hence
⑤ to advance the timeless spirit once conferred to us in a spare Philadelphia Hall.

日本語訳(従来型)
③ 今日の勝利は部分的なものにすぎないことと
⑤ フィラデルフィア議事堂において、かつて我々に与えられた不朽の精神を前進させることは、
④ 今から4年後、40年後、400年後まで、ここに立つ人々に委ねられるだろうということを
② 念頭に置きながら
① 我々は行動しなければなりません。

 数字を振っているので、英語原文と日本語訳を比較すれば明確ですが、語順が決定的に逆です。原文の「We must act」は、日本語では全体の最後にきて「我々は行動しなければなりません」となっていますし、その次の「knowing」は「念頭に」と訳され、「我々は行動しなければなりません」の前に来ています。全てがあべこべなのです。

 これ以降の部分も同じように前置詞・不定詞・関係代名詞・過去分詞によって修飾された名詞や代名詞が文中に複数あり、それぞれの部分で英語原文と日本語訳で語順が逆転しています。

 このような従来型の翻訳方法では、英語原文と日本語訳文の間を行ったり来たりして、同じ箇所を何度も読み直しながら翻訳する必要があります。これでは、時間がかかってしまうのは当然です。このような従来型の翻訳方法では、150wpmを出すことは不可能と言ってよいでしょう。

 そこで、翻訳方法を変える必要があります。そのための訓練方法がサイトトランスレーションです。通称「サイトラ」。通訳の育成プログラムで使われてきた訓練方法です。

続きを読む 2/2 サイトトランスレーションの方法とは

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