有利な点が多いのは

 まず、志望する大学が要求するTOEFLとIELTSのスコアを知ることが重要です。例えば、米ハーバード・ビジネス・スクールでは、TOEFLのスコアで109点以上、IELTSのスコアで7.5点以上が推奨されています。

 この2つのスコアのうち、相対的に達成しやすいのはIELTSのスコアだと思います。

 満点が120点のTOEFLで109点を獲得するためには、120点の4分の1の30点を占めるスピーキングのセクションで、27点前後を取らなければなりません。そして、27点前後を取るためには発音をネイティブにかなり近いレベルまで矯正する必要があります。しかしながら、成人してから発音を矯正することは、不可能ではないものの非常に困難です。

 IELTSでも当然ながら発音は重要なのですが、TOEFLと比較するとある程度の訛り(なまり)が許容され、それによる失点は少ないようです。このことは、もともと英連邦を構成する英国・オーストラリア・ニュージーランドなど、国や地域によって異なる訛りを許容することを前提に作られた試験であることも、関係しているかもしれません。ですから日本人にとっては、発音の評価基準においてIELTSのほうが若干有利な面があると思います。

 次に、TOEFLとIELTSでは、スピーキングセクションの方式が異なります。TOEFLは、録音方式であるため基本的にはPCに向かって1人で話します。一方IELTSでは、1対1で試験官と話します。人同士の会話ですから、聞き取れない場合には聞き返すことも可能です。TOEFLは聞こえてきた質問や内容について1人で解答する方式ですから、当然聞き返すことはできません。

 この点について、どちらが良いかは受験者によると思います。日常的に英語でやり取りをすることに慣れている方は、聞き返したりできる分、IELTSの方が気が楽かもしれません。しかし、英語でのやり取りに慣れていない方は、一方向で意見や要約を話す録音式のTOEFLのほうが適している可能性もあります。

 さらに、TOEFLとIELTSの間には、高スコアを取るための語彙力の傾向にも違いがあります。2つを比較すると、TOEFLのほうが自然科学系の専門用語をより多く覚える必要があります。ざっくりとした日本的な表現でいえば、TOEFLはより理系に近いと言えるかもしれません。一般的な単語に加えて、このような専門性の高い単語を習得する負荷を考えると、語彙力の面でも、IELTSのほうが有利とも言えると思います。

 最後に留意すべき点は、ライティングセクションの形式です。TOEFLのテストでは、全ての解答をコンピューター上で行うため、当然ながらキーボードでのタイピングが必要になります。一方でIELTSではコンピューター形式もありますが、紙での筆記形式もあります。従って、「コンピューターの操作が苦手」、「英語のタイピングが遅い」という受験者には、IELTSのほうがより適しているかもしれません。

 さて、TOEFLとIELTSの違いについて見てきました。結論をまとめると、「留学志望先の語学力の要件として、TOEFLとIELTSの両方のスコアが採用されている場合は、IELTSのほうが日本人にとって有利な点が多い。ただし、一部の受験の形式については、個人によってその適性が異なる」ということになります。

 Tさん。以上のような結論を踏まえた上で、もし迷われる場合は、それぞれの模試を受験されて決めるのが良いと思います。TOEFL、IELTSいずれも公式模試や公式問題集がありますので、トライしてみてはいかがでしょうか。

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